毎週、様々なテーマでお送りする、
Housing Column。
第 2 回
  美しい住まい・街
澤田 光英
((株) 日本建築センター代表取締役会長)
日本の住まいと暮らし
 戦前の日本では、地場に住み“なりわい”を営む棟梁によってそれなりの住まい・街なみが形成されていました。その結果、町内のコミュニティ(善隣関係)が維持・保全されてきました。ひとたび台風が来れば、屋根や雨漏りの修理にかけつけ、また子供の成長と共に必要となる増築、造り替え等、住む人の生活を常に気にかけることを、なりわいとして作り上げてきました。また、棟梁は祭りごとの中心役となり、人と人を繋ぎ、居住者同士の繋がりを基盤とした、ほど良い街づくりに大きな役割を果たしてきました。
 しかし、戦後の住宅不足を背景とした住宅生産の工業化・産業化の流れは、こうしたなりわいを特に大都市地域において失わせることになりました。“味のない”住まい・街ばかりになりました。

諸外国の住まいと暮らし
 一方、米欧の一流国では、住まいと暮らしは、どの様に営まれているのでしょうか。米欧、とりわけ、米国人の住まい方は、ハイスクール卒業と同時に親元から離れ、ルームメイトを探し、自身が通う大学、あるいは職場に便利な場所に移り住んでいきます。それから収入に応じ、より快適な住まいへ移り住み、結婚、出産に合わせ、賃貸住宅または持家へと、自身の暮らしのグレードアップを図っています。
 要は、快適に暮らすことを第一義に住まいを探し、移り住んでいます。ここで読者もお気づきだとは思いますが、米国人は平均しても6、7回程度は住み替えを行っています。ということは、それだけ個人の特異性、ライフスタイルに合う良質なストックがあり、それがうまい具合に循環しているために、住み替えるのがさほど面倒でなく、容易に行える仕組があるということです。
 また持家に関しては、建てた家、購入した家は資産となり、手を加えながら住めば住むほど資産価値が上がる仕組があります。米国で言うところのDIYer (日本で言う「日曜大工」) は、そこに住む人自らが、より暮らしやすい住まいへと改善したり、プロとしてのリモデラー(リフォーム) が介在して、住まいの価値向上を図ることが普通になっています。日本と違って住まいはまさに個人の資産なのです。そして、何よりそれをあと押しする住宅税制や、金融システムが整備されているのです。
 米国や欧州の住まいは新しいからといって、価値が高いわけではありません。たとえ古くても、住む人がその住まいを充分に理解し、住みづらい部分、不便な部分、美観がそこなわれた部分に手を入れることで住みやすくし、それが価値として認められるのです。
 さらに、建物そのものだけではなく、周りとのコミュニティ、住まいの環境にも非常に大きな価値を求めます。例えば隣家との間にバリアを置かずオープンにしたり、庭を繋げ緑地帯を増やし、時には自身の庭やその周辺にまで手を入れることで、ポケット・パークのような開放的な環境を作り出すのは当たり前。このためコミュニティが増進し、安心・安全な暮らしが確保されるというわけです。それが街のステ−タスになるのです。

これからの日本の住まい、街並み
 これまでお話ししてきました通り、戦前の日本、現代の米欧諸国には、ため息の出るような、快適な住まい、街なみとそれを支える仕組があります。またそれが、価値として認められることで、国家経済にも非常に大きな安定的な資産となるのです。
 現在の日本にあっても庭をきれいにする、季節の催事には飾り物をするなど、暮らしを楽しむためのDNAは脈々と受け継がれているわけですから、これからの行政、そこに住まう皆さんの生活意識とか暮らしの素養こそが、価値ある住まい、街なみを実現する切り札の一枚になると考えます。そのためには、住まい・街は個人の敷地単位で完結するのではなく、お隣同志の相隣関係を常日頃から大事にしていただき、その上で住まいも、そして街も公共財であり、社会財だということをあらためてお考えいただくことを切に願うものです。さらに産業界は、それを充分にサポートしなければならないのです。
昭和 23年 5月 建設院特別建設局監督部監督第2課
  41年 5月 建設省住宅局住宅建設課長
  47年 6月 建設省住宅局長
  49年 9月 日本住宅公団理事
  54年 7月 日本住宅公団副総裁
  55年 9月 財団法人日本建築センター理事長
  56年 6月 株式会社日本建築センター代表取締役社長
平成 3年 8月 建築審議会 住宅・宅地部会副会長
  5年 11月 勲二等瑞宝章受章
  10年 5月 社団法人日本建築士会連合会名誉会長(現職)
  12年 6月 晴海一丁目地区市街地再開発組合理事長
  14年 6月 株式会社日本建築センター代表取締役会長(現職)
(平成16年1月1日現在)
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