毎週、様々なテーマでお送りする、
Housing Column。
第 9 回
イギリス 住まい500年の旅 (3)
 イギリスの住まい、街並みを、「中世(500年前)に生まれた街」と「100年前に生まれた街」の2回紹介してまいりましたが、今回は最終章「現在〜未来へ」のご紹介です。
 イギリスは、現在日本のバブル期のように不動産が好調で、投資目的に住宅を購入する人たちも増えています。また、人口はほぼ横ばいなのですが、シングル世帯が増加し、特に都市部で住宅が不足しており、様々な開発が進められています。今回ご紹介する街は、2000年のミレニアムイベントにあわせて計画され、現在も進行中のグリニッチ・ミレニアムビレッジと、チャールズ皇太子が係わり注目を浴びたパウンドベリーです。イギリスの新しい街づくりの現況をご覧ください。

第三章
未来へ
ミレニアムビレッジ、パウンドベリー

●イギリス不動産事情

999年の賃貸
 イギリスの土地と建物は同じ不動産で、建物は土地の一部と考えます。土地の権利の中で主要なものはフリーホールド(自由保有権、実質的には所有権と同じ)とリースホールド(定期借地権)で、フリーホールドは保有期間がフリー、つまり永久の保有権となります。リースホールドは期間限定ですが、999年といったものもあります。このフリーホールドと長期間のリースホールドという概念は、半永久的に保有することから実質的には日本でいう所有権と同等と考えられます。

図面はいらない?
 不動産の売買や賃貸の際、日本では図面を見て判断しますが、イギリスには新築を除き、その習慣がないようです。寝室2部屋、キッチン、ジャグジー付バスルームといった情報と外観の写真が不動産屋さんに並んでいます。サイズなどでは測れない暮らしの価値を評価しているように感じます。

●グリニッチ・ミレニアムビレッジ

テムズ河の自然を蘇らせたエコ・パークに住宅が隣接している。
 西暦2000年のミレニアムイベントに合わせて開発されたテムズ河岸のグリニッジ半島のプロジェクトです。イギリスは、人口はほぼ横ばいなのですが、シングル世帯の増加で特に都心部の住宅が不足していますが、この地域はロンドン中心部まで地下鉄で15分の好立地です。またテムズ河岸の野生生物が生息した風景をよみがえらせて、理想的な環境へ改善するプログラムも組まれている環境に配慮したプロジェクトです。様々な建物が建設されていますが、特に集合住宅は、21世紀の建築デザインへの新しいチャレンジという印象を受ける個性的なデザインです。建物を壊すことなく長く住まう文化のある国で、この新しい街が100年後にどのような姿になるのか、またどのような暮らしが営まれるのか期待が膨らみます。
集合住宅では珍しい木質の外壁が使われている 個性的なデザインの建物が並んでいる

●パウンドベリー

写真はクリックすると拡大表示されます
夏の日差しを避けながら太陽光を取り込むデザイン
 パウンドベリーは、ロンドンから南西約200km、チャールズ皇太子の所有する土地に建設されたことによって大きな注目を浴びた住宅地です。1980年代の終わりにマスタープランが立てられ、1998年に着工、25年かけて完成される計画です。メインストリートから中の住宅エリアに入ると全体が迷路のようで、中世の街に迷い込んだ印象を受けます。地元で産出された石を積極的に使うなど木、土など自然の素材が街中に使われ建物の外観は自然に馴染む色合いです。ここが年月を重ね、100年後、レッチワースのような街に深みを増していくことが楽しみです。そのためには建物だけでなく、暮らしを作っていくことも大切です。パウンドベリーでは、街の中に住民が集まる場を作ったり、お隣同士が親しみやすくなる仕掛けなど、500年前から使われてきた街づくりの手法が活かされています。また居住者が組織をつくり、定期的に会合をしてコミュニティ内のルールをつくるなど住民自らが活動をすることで「私たちの街」という意識を高めています。
右を向くと このような風景になる

●おわりに

 パウンドベリーもミレニアムビレッジもどちらも「アーバンビレッジ構想」にもとづいて街が作られています。アーバンビレッジとは、歩ける範囲で生活に必要な施設やサービスが配置されている“歩いて生活できる街づくり”です。また、この2つの計画を視察している中で、【サスティナブル】という言葉が頻繁に使われていました。サスティナブルは「持続可能な」と訳されますが、エネルギー削減など地球環境への配慮に限らず、デザイン的な継続性や、何より、そこに住む人々が心地よく暮らし続けるための工夫や仕掛けが感じられました。
 イギリス住まい500年の旅は、人間が暮らしやすい街とはどのような街なのかを一所懸命考えて街づくりをした先人と、そしてその街を創り込みながら暮らしている人々の見事な連携が印象に残る旅でした。
 
 
 次回のHousing Columnでは、ドイツ、オランダのエコロジー住宅事情をお届けします。
建築中の家々
迷路のような街並み
外壁に地元の石が使われ、空気に馴染んでいる
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