毎週、様々なテーマでお送りする、
Housing Column。
第 29 回
映像との新しい暮らし方
キドサキナギサ (一級建築士)
音楽好きに男女差はあまりないと思うのですが、ことそれが「音質」つまり「オーディオ」好きとなると、とたんに男子の独壇場になってしまうのはなぜなんでしょう。映像系も同じですよね。映画好きに男女差はないのに、「画質・音質」つまり「ホームシアター」となると、お父さんが張り切り出す・・・
3年ほど前に、私を含め女性建築家3人に「ホームシアターのある家」の展覧会が依頼された頃は、まさに「ホームシアター」=「男の部屋」というイメージでした。展覧会は9坪ハウスをプロデュースするコムデザインとホームシアター編集部のコラボレーション企画だったのですが、渡された資料を見ても、「ホームエレベータで地下へ直行、エレベーターの扉が開くとそこは黒一色の映像・音響空間が」とか、「防音完備の個室には、選び抜かれた木の壁とこだわりのバーカウンター、そして○○社のスピーカーが」とか、マニアックな世界が広がっていました。友人の建築家が設計した住宅を見せてもらっても、「ホームシアター」はたいてい地下にあって黒い部屋、そして設計者がみな口を揃えて言うのは、「お父さんがどうしてもこの部屋だけは夢だったから」と。つまり、これはお父さんが世のお父さんたちに「どうだ、すごいだろー」と言いたい「男子ドウダ!」の空間なんですね (ちなみに、住宅における「女子ドウダ!」はキッチンのような気がします)。
たしかに、いろいろ調べてみるとまずホームシアターの理屈はまず、人体の構造に行き着きます。人間の耳は目とほぼ同じ高さにある。なので空中のこの1点に向けて音と映像が集まるようにすれば、耳と目から入った情報が「脳内シアター」をつくり出します。これは、映画館とはまったく別の「おひとりさま (せいぜい、おふたりさま) シアター」で、小さな空間だからこそ可能なことなのです。音も映像 (光) も波長なので (とこのへんからどんどん理系ゴコロをくすぐる理屈がどんどん出てきて)、スピーカーやスクリーンの理想的な (ITU-R) 配置があり、壁はフラッターエコーを出さないように平行にしない、といったベーシックなルールがあります。
そこで私は、9坪ハウスをこのルールでつくりました。最初から壁はナナメで、この壁が音の反射面になったり、映像の投影面になったりします。そして座ったときの耳と目の高さに、音と映像が集まる仕掛けをしました。でも日常生活で、何時間も「ホームシアター」に座っていられることは少ない。家事や出かける支度をしながら、また寝ながらでも映像が楽しめる工夫をしています。そしてデザインはあくまでも恰好よく。つまり「男子ドウダ」と「女子ドウダ」を同時に満足させる「ホームシアター」をつくろうと思ったのです。
ところが3年経って、ホームシアターの主流はすっかり様変わりしてしまいました。いまから考えるなら「リビングシアター」なのだそうです。わざわざ暗い1室をつくって、そこに行かなければ音も映像も本格的に楽しめない、のは帰宅の遅いお父さんにはけっこう面倒です。ましてや、電話がかかってきては中断し、夕飯や明日のお弁当の支度が頭をよぎるお母さんには、なかなか落ち着いていられません。もっと気楽に、家族がいつも集うリビングで、高品質の音と映像を楽しみたい、若い世代が増えてきたのかもしれません。
こんな「カジュアルリビング」が台頭してきたのは、大型テレビの普及も影響しているようです。プロジェクターやプラズマテレビは、どうしてもカーテンを閉めた暗い部屋のほうがきれいに映りますが、液晶テレビは周囲の明るさに左右されません。ただ、ぽんと部屋に置くだけで高品質の画像が得られるようになったのですから、いままでのように専用ルームをリフォームでつくる、のではなく、もっと気楽に家具を選ぶ感覚でリビングルームにシアターを持ち込めるようになりました。
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さらに画期的なのはリモコンの1本化です。我が家もそうですが、いまはビデオとDVDが部屋のなかに混在しています。まだレーザーディスクのコレクションが手放せない人もいると思います。一気に買い換えない限り、徐々に増えてきた再生装置とオーディオ類の配線で床はぐちゃぐちゃ、リモコンは多種多様。いざビデオを見ようと思っても、なぜかDVDのリモコンしか見あたらない・・・状況に陥っていませんか。これをすっきり1本にまとめてくれるプロがいるのです。しかも、それぞれの機器を使うシチュエーションに応じて、照明の明るさ暗さまでプログラム設定して、ボタンひとつで (タッチパネルかもしれませんが) コントロールができる・・・らしいのです。
10月28日、トリトンスクエアにその「プロ」、クリオネの浅野さんをお迎えして、我が家のリビングをシアターにする方法をお聞きします。次回のエッセイでは、リビングシアターの基本的な考え方や、音と映像のための機材の選び方、浅野さんのセミナーでの企画などについて、書いていきたいと思います。
life+“音”
音を楽しむ暮らし 〜リビングシアター〜
10月28日(土)14:00〜15:30
セミナーは終了いたしました。
一級建築士
東京都生まれ。
城戸崎和佐建築設計事務所
を主宰。
アフリカの魚市場や九州の保育園から小さな家具まで、楽しい生活のサポーターとして設計活動中。
協力:
(社) 東京建築士会
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