毎週、様々なテーマでお送りする、
Housing Column。
第 31 回
いまどきリビングシアターのつくり方
キドサキナギサ (一級建築士)
 「うちのテレビ、なんとかしたいね」とある日、夫が言いました。夫も建築家で同業者ですが、こと自宅となると、リフォーム担当だった私に「依頼」が来ます。結婚を機にリフォームしたのは、築20年のマンションの4メートル×10メートルほどの小さな一室です。好きで集めた椅子を置けること、プロジェクターで100インチの画面が見られるようにすること、が「施主 (=夫)」の設計条件でした。
 当時まだ出始めだった単眼のプロジェクターは、6メートルの引きがないと100インチの画像が映せなかったので、4メートル×6メートルの白いワンルームにして、壁面のどこにでも映写ができるようにしました。ベッドや造りつけのキッチンも白くしたのは、椅子だけがぽんぽんと目立つようにしたかったからでもありますが、単眼を絞ってハガキ大のサイズから、部屋の端にプロジェクターを置いて100インチまで、さまざまな大きさの映像を部屋のあちこちで楽しめるようにする仕掛けでもありました。ところが、数年前にプロジェクターの調子が悪くなり、気がついたら映像は17インチの液晶テレビで見るだけ、というなんとも貧弱な環境になっていました。
 
 そんななか、アナログ放送終了のお知らせです。2011年7月24日からは地上デジタル放送だけになるのだそうです。ということは、いまのままではテレビが見られなくなる・・・冒頭の夫の発言は、いずれ地デジ用チューナーを買っても、17インチの画面では小さすぎてハイビジョンかどうか判別できないよねー、というものでした。要は大きい映像が見たい、という単純な欲求です。ところが、これがそう簡単には答えが出ない。
 まずは、大画面を薄型テレビにするかプロジェクター+スクリーンにするか、という選択肢があります。薄型テレビでも、液晶かプラズマかを選ばなければなりません。プロジェクターは20万円前後のものから200万円を超えるものまで多種多様。スクリーンだって壁掛けタイプと立ち上げタイプがあって、壁に固定するのか巻き取り式なのか、電動か手動かの違いもあります。さらにテレビもプロジェクターも、ハイビジョン対応かフルハイビジョン対応かで価格が変わってくるようです。周辺機器も選ばなければなりません。スピーカーにAVアンプ、ビデオデッキにDVDレコーダー。全部を新しく購入しなくても、いまあるものが使えるのでしょうか。地デジ対策を睨みつつ、なにからどう手をつけていけばよいのでしょう。
 
 で、「助けてプロの人!!」と言う前に、ちょっと落ち着いて考えてみます。私のところに設計を頼みに来る人も、ただ困っているのでなんとかして、では話が前にすすみません。設計の場合は「どこに (敷地)」建てて「誰が (建主/利用者)」何人で使い、「いつ」「どんな」ことがしたいのか、から始まります。例えば「工場の一画に」「本社の社員と役員の計70人が」「平日の9:00〜17:00まで」「事務・会議・応接・休憩」をするためのスペースがほしい、というように。我が家の場合は「リビングで」「夫と私が」「休日」「サッカーや映画を大画面で見たい」というかんじでしょうか。平日の朝のニュースや、深夜番組はわざわざ大画面で見なくてもいいかもしれません。
 実は「どこで」が決まると、画面のサイズがほぼ決定できるのです。せっかくの大画面をきれいな画質で見るためには、座る位置を画面の高さの2.5〜3倍の距離に設置するのがベストなのだそうです。スクリーンであれば、視野角 (視線の中心からスクリーンの両端までの角度) を30°以上にするのがポイント。つまり見る場所から画面やスクリーンの距離で、サイズが反対に割り出せるのです。
 次に、「いつ」見たいかが画面を選ぶ決め手になりそうです。昼間にのんびり見るのであれば、いちいちカーテンを閉めて暗くしなくてもよい液晶テレビになるでしょう。プラズマテレビは光が映り込まないほうがきれいに見えます。夜ゆっくりくつろぎながら見るのであれば、部屋の照明も少し落としてスクリーンで鑑賞してはどうでしょう。映画館の気分が味わえます。スクリーンを設置する広い壁面が見あたらなければ、窓の前に下ろしてしまえばよいのです。これは香港の友人宅で見た方法。スクリーンがカーテンも兼ねて一石二鳥です。
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 ここまで決まったら、部屋の見取り図を持ってプロに相談に行けそうです。忘れてはいけないのが、コンセントやアンテナの取り出し口の位置。AV機器やスピーカーは手持ちのものをリストアップして。そして予算もしっかり決めましょう。闇雲にスペックをあげたくなるのは、「どこで」「誰が」「いつ」「どんな」がはっきりしていないとき、なんです。新築や大規模なリフォームであれば、照明の調光 (明るさをコントロールすること) も低予算で可能です。
 
 28日のセミナーでは、クリオネの浅野さんにプロならではの実例紹介と、実際に会場に機材を持ち込んで参加者に体験していただく予定です。私もユーザーとして、また空間作りのプロとしてナビゲータを務めたいと思っています。

life+“音”
音を楽しむ暮らし 〜リビングシアター〜
10月28日(土)14:00〜15:30
セミナーは終了いたしました。
一級建築士
東京都生まれ。城戸崎和佐建築設計事務所を主宰。
アフリカの魚市場や九州の保育園から小さな家具まで、楽しい生活のサポーターとして設計活動中。
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