毎週、様々なテーマでお送りする、
Housing Column。
第 36 回
【東京タワーというクリスマスツリー】
暮らしのなかのランドマーク

 今、東京の繁華街には様々なクリスマスツリーが飾られ、恋人達や家族などで賑わっています。そんな都内最大級クリスマスツリーのひとつが、東京タワー下に設けられた高さ15mのツリー。圧巻はやはり、夜空に向かってそびえる東京タワーとの競演です。下のツリーも魅力的ですが、東京タワー自身が、街を彩る最大のクリスマスツリーなのです。
 観光スポットとしてはもちろん、『午前0時、ライトアップが消える瞬間を一緒に見つめたカップルは永遠の幸せを手に入れる…』という「ライトダウン伝説」が生まれ、遠くから人が訪れるほど、様々な人に愛されている東京タワー…。今回は特別企画として、そんな東京タワーのエピソードと、暮らしの中のランドマークについて、ご紹介しましょう。

●もはや戦後ではない…
わずか15ヶ月で建てられた世界一の自立式タワー

 東京タワーの完成は、昭和33年 (1958)、12月23日。正式名称は「日本電波塔」。タワー本来の役目は関東エリア半径100km圏内に放送電波を届けることでした。相次いで開局する各放送局 (テレビやラジオ局) の電波塔を一本化する構想で建設された総合電波塔であり、大規模地震の際に鉄道の緊急停止信号を発信したり、大気汚染の調査のために風向きや風速を計ったりするために造られたタワーなのです。
 その2年前に、「もはや戦後ではない」という言葉が流行し、文字通り日本は大いなる発展を遂げようとしていました。「建設するからには世界一高い塔でなければ意味がない。科学技術が進展した今なら必ずできる」…そんな思いを込め、東京タワーはおよそ4000トンの鋼材と鳶職人の手作業により、なんとわずか15か月で完成しました。朝鮮戦争で使用されスクラップ化された戦車の一部が塔の鉄に使われているとも言われています。その高さは、333m。フランスのエッフェル塔より9m高く、自立式の鉄塔としては、現在も世界一の高さを誇っています。東京タワーは、まさに日本復興のシンボルだったわけです。

●東京タワーのあまり知られていないお話


 当初、東京タワーは上野公園付近への建設が検討されていましたが、地盤の関係から、現在の場所に決まりました。住まいも同様ですが、地盤の強い場所に建てることは大切なことなのです。
 開業をしたその年の秋、地上253mへの巨大アンテナの吊り下げが行われました。1cmの誤差も許されない難工事を成功させた話は、NHK『プロジェクトX』で有名となりました。
 「東京タワー」の名称は完成直前の名称の審査会で決まりました。事前に名称が公募され、86260通が寄せられたそうです。一番多かった名称は「昭和塔」で、次いで「日本塔」「平和塔」など、当時の日本人の思いが反映された名前が多かったとか。他にも、アメリカとソ連が人工衛星の打ち上げ合戦をしていたことから「宇宙塔」、皇太子様 (現天皇陛下) のご成婚が近いということで「プリンス塔」という名称もあったそうです。「東京タワー」は223通でしたが、審査の結果、最も名称が相応しいということでこの名前に決まりました。

●東京タワーは暮らしの発展のシンボルだった…


 東京タワーに象徴されるように、我々日本人の生活も発展を遂げました。昭和の下町を描いてヒットした映画『ALWAYS 三丁目の夕日』にも、建設途中の東京タワーが登場し、暮らしの変化が描かれていましたが、三種の神器 (テレビ・洗濯機・冷蔵庫) が普及したのもこの頃からです。
 住まいに関しても、文化住宅が登場し、ダイニングキッチンを備えたいわゆる『団地』が憧れの住まいとなりました。まだまだバラック屋根の住宅やちゃぶ台を囲む生活が当たり前でしたが、東京に暮らす家族は、窓から見える東京タワーを眺めながら、もっともっと暮らしがよくなることを感じていたのです。

●第2東京タワーの時代へ


 現在、テレビ放送のデジタル化もあり、第2東京タワーの建設の話が進んでいます。その完成も楽しみではありますが、今だからこそ、歴史ある東京タワーに愛着を感じている人も少なくありません。その証であるかのように、今年もさまざまな映画や小説に東京タワーは登場しました。東京タワーのある風景こそ、東京なのです。そんな日本の変遷をみつめてきた東京タワーを眺めながら、ただ懐古趣味に走るのではなく、『モノが豊か』な暮らしから、『心も豊か』に…というこれからの暮らしや住まいを考える時代になったのかもしれません。

●暮らしのなかのランドマーク


 首都のランドマークといえる東京タワーですが、街のシンボルとなる建物や風景は東京だけにあるものではありません。みなさんの暮らす街にも、「この街らしさ」を思わせる建物や山々、自然の風景があることでしょう。またそんなランドマークは、住まいの中にもあります。庭の樹木や玄関の絵、背比べの傷跡が残っている柱、子供達の落書き、色の変わったフローリング…etc.
 暮らしの中にあるランドマークは、家族の歴史のシンボル。新居を建てる際、どんなものがシンボルになればいいか、家族で話し合ってみるのも、住まいづくりの第一歩として、楽しいコミュニケーションになるかもしれませんね。
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