毎週、様々なテーマでお送りする、
Housing Column。
第 61 回
<街の風景>としての住宅
長尾 亜子 (一級建築士)
地図を持っていても迷子になってしまう時があります。けれども道というのは大変よく出来ていてどこかには必ず繋がっているので四苦八苦しつつもなんとかなっています。それに味をしめている訳ではありませんが、たまに積極的に迷子になって魅力的な横道を曲がったり、進んだり。ウィンドウショッピングならぬウィンドウスケープとでもいいましょうか、初めて出会う街をくるくる眺めています。
そんなこんなでそぞろ歩いていると、不思議なことに同じ街でも道を一本入っただけで佇まいが違います。事務所の近所に好きなゾーンがあるのですが、植物がテンコモリだったり、謎の階段やガレージ屋上などなど、どうしてこうなんだろうと建築心がときめきます。
先日も緑の多い住宅街をそぞろ歩き。えいっと曲がった先には小さな畑が目に飛び込んできました。分割され番号がついており実っているものも様々。市民農園のようですが、ビニールを被せたり畳があったり、小さな畑を楽しんでいる雰囲気が伝わってきます。私もベランダでハーブを育ててお料理に使ったりしていますが、土に親しみたいという都市住民は確実に増えているのでしょうか?
早速調べてみると「都市農地を活用したまちづくり」も進み始めているようです。『様々な要因で都市の中に残された農地は、今までは宅地の予備軍として見られる傾向が強かったが、今日では新鮮な食料の供給源として、あるいは潤いのある空間を構成する要素の一つとして認識されるようになっている。』(財団法人 都市農地活用支援センターHPより) 小規模な農地というのは街のオープンスペースとして日照・通風の確保にもなっているようで、確かに高い建物に囲まれていない空が見えて土の臭いがする空間があるのは心地よいものです。
この都市農地のようにお金になる土地ではなく都市環境として捉えると変わってくることがある。――そんな考えからある程度まとまった土地を対象に住宅を考える研究会 (G4研究会) を2年程前から行っています。
G4研究会とは、設計事務所を主宰している4人の女性建築家 (
*1
) で構成された研究会です。カメの歩みではありますが、日々の設計活動で気づいた事を種に現状の住宅供給のされ方や建築家にはなかなか入り込めない敷地分割について検討・研究しています。
大きなお屋敷が、ある日取り壊されて4〜5軒の建売住宅が建つ風景を目にされた事はありませんか?
ゆったりと庭を持って建っていたお屋敷は、都市農園のように街の雰囲気を作り上げる重要なピースだったことでしょう。そこにそっけなく、似たようなかたちの家が立ち並ぶ。それは街の風景を変える大事件です。
切売りするのはどうしようもないとして (多くは税制上の事由です) 住宅を建てる場合にどのようにすれば今までの街の雰囲気を保っていけるでしょうか。
私たちは敷地の分割方法に着目しました。多くは自ずと建築のかたちが決まってしまうような経済合理主義で分割されます。それを風景原理とでも申すような経済ではない合理的方法があるのはないかと考えています。普段私たち建築家が接しているのは出来上がった敷地です。しかし一つだった敷地が4・5つに分けられ一斉に住宅が建てられる。ならばそこには新しい住宅の建ち方、生活の風景があるのではないかと思うのです。
写真はクリックすると拡大します。
街歩きでみつけた風景
市民農園
工夫を凝らして楽しんでいる
街の風通しに貢献
そしてキーワードとしたのが「外空間の生活風景」でした。
一斉に新築されるのであれば集合住宅でもなく、お互い背を向けた戸建てでもないような、今の私たちの生活にフィットするような家のかたちがあると考えています。
*1:G4研究会メンバー
宮 晶子 (STUDIO 2A)
木島 千嘉 (木島千嘉建築設計事務所)
井坂 幸恵 (bews)
長尾 亜子 (長尾亜子建築設計事務所)
一級建築士
東京生まれ。多摩美術大学建築学科卒業。妹島和世建築設計事務所を経て長尾亜子建築設計事務所を主宰。住宅、商業施設、展示デザイン、家具など空間に関わる設計活動を行っている。新築だけでなく改築・改装も手掛け、蓄積された社会資産をデザインによって活用。08年よりデザインショップ・リノベーションデスクに参加。
長尾亜子建築設計事務所
リノベーションデスク
協力:
(社) 東京建築士会
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