毎週、様々なテーマでお送りする、
Housing Column。
第 65 回
ウォール・デコレーションのススメ
インテリア・デザイナー
細井 絵理子
ドアを開け、室内に入った瞬間に思わず「素敵」と声に出してしまった経験はありませんか?
ホテルやレストランを訪れた時。どなたかの家に招かれた時。素敵なインテリアを目にして思わずつぶやくその一言。きっと誰でも一度はそのような経験があるのではないでしょうか。
では、自分の家ではどうですか?初めてあなたの家を訪れるお客様の気持ちになって改めて自宅を見回してみましょう。ドアを開けた瞬間にそこにはどんな空間が見えますか?
我々インテリアの仕事をしている人間は、常にその一瞬を意識してデザインをしています。それが住まいという日常の場であっても同じです。
毎日幾度となく扉を開ける自宅だからこそ、その度毎に小さな幸せを感じられたら…。それはとても素敵なことだと思いませんか?
●素敵な空間とは?
お金をかければ「素敵な空間」が簡単に作れるというものではありません。そのためにはそれなりのテクニックと工夫が必要です。華美な装飾や贅沢なしつらえは必ずしも必須事項ではないのです。(もちろんそれがあってより素敵になることはありますが…)
住まいには住む人の家に対する思いや生活を楽しむ心のゆとりが如実に表れます。毎日、家に帰る度に小さな幸せを感じられるインテリア。それが「素敵な空間」なのです。そのためには住む人が心豊かに暮らせる家になるよう、空間に「場」を作ることが大切です。
●視線が集まる「場」を作る
人が空間に脚を踏み入れる時、その視線は必ず入口から最も遠い場所に向けられます。これは無意識のうちにこれから入る場所の空間把握をするためと言われています。つまりその空間の広さや状況を一瞬にして把握し、安全性を確認してから脚が動くのです。ですから、部屋の第一印象は入口から最も遠い場所 (壁面や窓) がどのようなインテリアになっているかに懸かっていると言っても過言ではありません。インテリアの世界ではそのような場所にデザイン上のポイントを置くことを「フォーカルポイント」と呼びます。素敵なホテルやレストランを思い出してみて下さい。必ず入口の正面 (向かい側) に大きな花や絵が飾ってあるなど、何らかのデザインが施されています。それが「場」を作るということなのです。まずは視線が集まる場がどこなのかを確認し、その場所をどう「魅せる」空間にするかを考えてみましょう。
●壁面を飾る「ウォール・デコレーション」
よくお客様から平面図を提示されインテリアの相談を受けるのですが、平面図だけでは良い空間デザインの打合せは出来ません。空間は3次元。つまり高さの情報が不可欠なのです。高さ=壁面のデザインをするかしないかでその部屋の印象は180度変わります。立っていても座っていても、人の視界に入る最も面積の多い場所は壁面なのです。しかし残念ながら日本の住宅の多くが白いビニールクロスに覆われた何も無い壁で、あるのはカレンダーと時計だけ…。これでは「素敵な空間」など夢のまた夢です。
そこでおススメしたいのが、「ウォール・デコレーション」。フォーカルポイントとなる壁面にデコレーションを施すことで、簡単に部屋の印象を変えることが可能になるのです。
●アートパネルでお手軽デコレーション
絵や写真を飾るのは壁面装飾の基本中の基本。ですが、空間のイメージやサイズが合うものを探すのは意外と手間がかかるもの。ましてや絵画等は高価なものも多く、季節や気分に合わせて気軽に取り替えられないのが難点。そこで、手軽に飾れる紙を使ったアートパネルをおススメします。輸入の壁紙は10mのロールを1本から購入することが可能。思い切って華やかで目を引くデザインのものを選んでパネル状に加工して飾ってみましょう。和の落ち着いた雰囲気が好きなら手漉き和紙を使って。大型のデザインショップには様々なデザイン、質感の紙があり容易に手に入ります。季節や行事に合わせて貼り替えることも可能です。
●色や柄でアクセントウォールをつくる
一面だけ壁の色を変えてアクセントウォールにしてみるのもデコレーションとしては大変効果的です。色を塗る、壁紙を貼り替える、布を垂らすなど手法も様々。一面もしくは壁の一部であれば家具の移動も容易ですし、大掛かりな工事にはなりませんから半日で作業は完了します。白い壁は部屋を明るくし、開放的なイメージをもたらしてくれますが、一方で無機質、殺風景などのマイナスの要素が前面に出てしまうこともあります。部屋の印象を思い切って変えたい時には大胆な配色や柄を試してみましょう。曖昧な色や柄はかえって部屋の印象をぼかしてしまいますので要注意。
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●「自分スタイル」で飾る
上手に壁面を飾るコツは幾つかありますが、バランスはその中でも大切なポイント。装飾とは、沢山飾れば良いということではありません。「引き算の美しさ」という言葉があります。少し離れた場所から天井の高さや家具とのバランスを見て美しい余白がモノをより美しく見せることにも注目してみましょう。
そして最も大切なこと。それは「自分らしさ」を見つけることです。はじめは本や雑誌を参考にしてテクニックを身に付け、次に自分なりの工夫で楽しみましょう。飾るものにルールはありません。お気に入りだった古いカレンダーの写真でも、頂き物の包装紙でも構いません。自分が「好きなもの」を飾ること。そうすることで「自分スタイル」が生まれます。自由な発想でウォール・デコレーションを楽しみましょう。
インテリア・デザイナー
東京都生まれ。1990年 文化出版局入局。雑誌「ハイファッション」のファッションぺージ担当。
デキャン社 (仏) のデザイナーのインタビューを機にインテリアの道へ進むことを決意。出版局を退局後、町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミーでインテリアを学び、建築会社に入社。住宅のリフォーム、オフィスビルの改修を中心に手がけた後、1998年独立。
2000年 インテリア・デザインオフィス「c//space」設立。個人邸や店舗のリフォーム、オフィスの内装デザイン、インテリアメーカーのカタログのスタイリング等のデザイン業務の他、テキスタイルメーカーや化粧品メーカー向けにインテリア、ライフスタイルのトレンド分析を行う。
1999年 「シンプルな生活」(日経事業出版刊) 編集協力
町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー東京校 講師
IIDA Professional会員、Design Association Member
シー・スペース
協力:
町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー
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