毎週、様々なテーマでお送りする、
Housing Column。
第 95 回
【温熱環境について知ろう!!】


 「春雨じゃ、濡れて行こう」…とはいかない最近の春の雨。
 春雨 (はるさめ) とは、春にしとしとと静かに降る雨のことをいいますが、このごろの雨は季節を問わず激しく降ることが多く、これも地球温暖化による環境の変化でしょうか。
 そこで今回は、環境に配慮して長く住み続けられる住まいの基礎となる「温熱環境」についてお話したいと思います。

●温熱環境ってなに?

 温熱環境とは、空間における熱や温度の状態のことで、住まいでは住み心地としての暑さ寒さのことをいいます。どのような温熱環境の住まいにするかによって、環境への影響も大きく変わってきます。
 住宅性能表示制度の評価項目にも「温熱環境」があり、暖房や冷房を効率的に行うために、壁や窓の断熱などがどの程度されているかを評価します。等級が高いほど省エネルギー性に優れていることを意味します。
 また、わたしたちは天気予報などを見て、つい気温のみで暑さ寒さを判断しがちですが、実際は気温のみで「暑い」「寒い」と感じているわけではありません。
 住まいの温熱環境を良くするためには、エアコンなどの温度設定だけに頼るのではなく、温熱環境に影響を与えるいろいろな要素についてバランスよく考えていく必要があります。

●どうして「暑い」「寒い」と感じるの?

 では、暑さ寒さの感覚に影響する要素には何があるのでしょうか?
 大きく分けて環境側の要素人間側の要素の2種類があります。
 環境側の要素には空気温度、相対湿度、気流速度、放射温度の4つの要素、人間側の要素には着衣量、代謝量の2つの要素があります。この要素をさまざまに組み合わせることで快適な温熱環境を得ることができます。
 わたしたち人間は、食事で得たエネルギーを、運動など活動することで熱エネルギーに変えて発熱体となっています。人体の発熱が周囲環境に伝える熱よりも大きいと暑いと感じ、発熱より大きい熱を周囲に伝えると寒いと感じると考えられています。

●熱はどうやって伝わるの? 〜(1) 伝導〜

 ところで、みなさんは、同じ室内にありながら、椅子の金属のパイプを手で触ったときには冷たく感じ、木製の机を触ったときにはほのかに暖かく感じた、という経験はありませんか?
 椅子のパイプ部分はステンレスなどの金属でできているため、触ったときに手のひらから熱を奪うので冷たいと感じますが、木でできた机は触れてもほとんど手のひらの熱を奪うことはありません。これは、熱の伝わりやすさが“もの”によって違うためです。

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 このように直接触れて熱が伝えられることを「熱伝導」といい、「伝導による熱の伝わりやすさ=熱伝導率」は物質の種類、特に材料の密度によって異なります。アルミ、ステンレスなどの金属は材料の密度が高くて熱伝導率も高いのに対して、木材やグラスウールなどは材料の密度が低くて熱伝導率も低いのです。
 「熱伝導」は、熱エネルギーが主に固体の中を高温側から低音側に移動する現象です。身近な例では、使い捨てカイロで手を温める、電気カーペットや床暖房の上で寝ころぶ、というのが「熱伝導」による熱移動です。
 御存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、熱伝導の場合、接触している部分は暖まりますが、触れていないところを暖めることは難しく、また接触している部分で低温やけどを起こすこともあります。

●熱はどうやって伝わるの? 〜(2) 対流〜

 次に、空気などの流体が熱せられて上部へ移動し、周囲の低温の流体が流れ込むことを繰り返しながら熱が伝わることを「対流」による熱移動といいます。風が起こって熱が移動する現象で、木枯らしが吹いて寒かったり、そよ風で涼しかったりすることがその一例です。
 また、暖房器具では暖かい空気を吹き出すエアコンや空気を直接暖める灯油ストーブなどがあてはまります。
 「対流」による暖房では、空間の空気全体を暖めることができますが、上下で温度差ができやすく、さらに床面や壁面、窓面などの温度はあまり上がらず、暖かさを感じにくい場合もあります。これは、床面や壁面、窓面などでは別の熱移動によって熱が奪われているからです。

●熱はどうやって伝わるの? 〜(3) 放射〜

 物体の電子の運動により放出される電磁波の形で、ものからものへ直接熱運動エネルギーが伝わることを「放射」による熱移動といいます。直接触れていない状態、離れている状態で熱が伝わる現象で、“輻射”“赤外線放射”とも呼ばれています。氷に直接触れなくても近くに手をかざすだけでひんやり感じたり、焚き火の炎に触れなくても手をかざすと暖かく感じることもその一例です。
 また、暖房器具では発熱体に直接触れずに暖める暖炉や電気ストーブがあてはまります。広く暖めることができますが、空気全体の温度が上がりにくく、暖まるまでに時間がかかります。
 さらに、全ての物体は放射エネルギーを吸収、放出しており、もちろんわたしたち人間も常に熱を放出しています。

 住まいの温熱環境における熱の流れは、以上の伝導、対流、放射のいずれか、またはその組み合わせによって起こります。
 
 いかがでしょうか?熱の伝わる様子は眼では見えないものなので、なかなかわかりにくいかもしれませんが、住まいの中や身の回りによくある身近な現象です。どこでどのように熱が伝わっているのかがわかると、もっと熱を伝えたい場合にはどうしたらよいのか、逆に熱が伝わらないようにするにはどうしたらよいのかがわかってきます。
 次回は、それぞれの熱移動が住まい全体でどのように発生しているのかについてお話したいと思います。

[住まいのナビゲーター 青木 千枝子]
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