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home>Housing Column>住まいと暮らしのハウジングコラム>リゾート空間の魅力/非日常性の演出1 - 東 利恵 (一級建築士)
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Housing Column ハウジングコラム

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第 32 回
リゾート空間の魅力
非日常性の演出1
東 利恵 (一級建築士)
 リゾート空間で一番大切なことは、日常を感じさせないことである。人が旅に出る理由のひとつは、普段の生活から抜け出すことにある。主婦は家事から開放されたいし、仕事を持つ人はしばし仕事を忘れたい。都会に住む人は自然にふれたいだろうし、田舎に住む人は都会の喧噪を楽しみたい。リゾートはそういった来訪者の願望に答えなければならない。
 ところが一方で、人は日常生活の便利さをいつでも要求する。暑いときも寒いときも、どんなに寒い地方であってもあるいはどんなに暑い場所であっても、室内は23度前後の快適な温度であってほしい。どんな山奥であっても、歩くのは嫌で、エレベーターがなければ耐えられない。食事はすぐにおいしいものが手に入り、テレビがなくてはだめ。トイレはウオシュレットがついてなければ耐えられないし、蛇口をひねればすぐにお湯がでる。皆さんもすべてではなくても、幾つかは心当たりがあるのではないだろうか。
 しかし、ヨーロッパを旅行したり、常夏の島を旅したりすると、上記のような希望は必ずしも満足できるわけではない。それでも、大満足するのは、それを超える異文化という非日常感があり、不便さも非日常の一部になるからだろう。異文化という要素のない日本のリゾートでは、これらの要望を払拭できる程の非日常感の魅力を、創れるかが大切なことになってくるのである。
 
 山代温泉白銀屋は文化財として登録された魯山人ゆかりの由緒ある温泉宿である。ところが、バブルの時代に建てられた新館は、コンクリート造7階建の和室と窓際に椅子がおかれた板張りのスペースがある典型的な旅館の客室であった。温泉町の中心に位置しているためアルミ建具の窓の外に広がる景色は風情のある風景とはいいがたいものであった。
 そんな典型的な一昔前の温泉旅館の客室から脱却して非日常の空間を演出するために、窓のある側を一面障子の光壁にし、景色を消して光による演出を行なった。また、加賀の文化を表現するために、伝統的にこの地方で使われた紺や紅色の塗壁を使い、非日常感を演出している。
 
 ホテルブレストンコートのプライベートコテージでは、結婚式をあげるカップル、結婚後10年あるいは15年の記念におとずれる人たちが人生の岐路や出発点を迎え、自分たちと向き合い人生を考えるための空間として設計した。
 色を取り去り、景色を切り取り、日常を感じさせるすべての物を隠し込み、ベッドさえも、壁の中に押し込んだ。日常的なスケール感を消すために、天井は4mの高さにした。外部は瞑想の庭というテーマで白い石の庭が龍安寺のような禅的な空間を作り、その周りに回廊が取り囲んでいる。この外部の空間も色を押さえ、モノトーンの世界が広がっている。
 
 リゾートの非日常感は、そのリゾートの個性を作り出し、魅力を生み出す大きな要因である。しかし、非日常であっても実際には人がそこで生活行為を行う訳であるから、日常性が全く否定できるものでもない。生活をおこなう場所であるという視点からいえば、住宅の空間と大きく違っているわけではない。どちらかというと、住宅の魅力になりうる部分を抽出して誇張することで非日常性を作っている部分もある。だから、リゾートの魅力は、住宅の中にも十分生かすことができるはずなのである。住宅の一部にこのような非日常性が表現できれば、その住まいの魅力も増すのではないかと思っている。
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白銀屋
白銀屋
ホテル ブレストンコート
プライベートコテージ
ホテル ブレストンコート
プライベートコテージ

 
 次回は「星のや軽井沢」を通してリゾート空間の魅力を語りたい。

一級建築士
大阪生まれ。日本女子大学住居学科卒業。東京大学大学院建築学専攻修士課程修了、コーネル大学大学院修了後、現在は、東環境・建築研究所 代表取締役。住宅、ホテルの設計など幅広く活躍中。主な作品:星のや軽井沢、トンボの湯、大原のアトリエなど。
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