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第 42 回
親の土地に子供が新築
中尾 博 (司法書士)
 2年前から毎月第3土曜日、晴海デザインセンターで不動産に係わるの法律・登記相談を担当しています。
 相談内容で最近めだって多いのが、親の所有する土地に子供が新居を建築するパターンです。これは土地価格が再び上昇に転じ、若い人が土地取得資金の負担に耐えられないということも考えられますが、親世帯である団塊の世代の持ち家がそろそろ建替えの時期に来ていることと関係しているのかも知れません。
 相談に来られる方は、新築予定の土地が親の所有であることにつき、何らかの不安を感じて来られるのですが、その多くは漠然としたもので、基本的には次の様な、簡単な説明で解決できる相談内容です。
  1. 建物の名義は工事代金の支払内訳どおりの持分とする (ローン分は借り入者の出資と見る)。
  2. 金融機関は建物所有者に融資する際、必ず土地にも抵当権設定をするため、親は子供の為に金融機関に対し、土地を担保に供する必要がある。
  3. 子供が新築するに際し、土地所有権を移転する必要は全くない。それでは土地名義は将来どうなるか。→土地所有者死亡時に相続人全員の協議により名義人を決定 (遺産分割)。
●相続に対する備え

 親の土地を有効に利用しその子が新築するというのは、ごく自然の流れで、また新築の家にその親が同居することも多くあり、ほほえましく、これは日本の将来にとっても推奨すべき事と思います。ただ、この時、土地所有者である親としては、当該土地を建物の名義人である子に相続させる旨を明確にしておくことが必要だと考えます。親の土地上に子がその資金で住居を新築する、そのような計画をされる時、一番重要で必ず考えなければならないことは実はこの事なのです。
 将来、土地の所有権を相続人の誰に引き継がせるかを明確にするその方法としては、まず遺言書の作成が一般的です、遺言のなかでも公証人役場で作成する公正証書による遺言をお勧めいたします。親が他の財産も含めこの土地を誰に相続または遺贈をさせるかを遺言しておけば、死亡時に当然その内容どおり遺産が相続され、相続人間での遺産分割協議の必要が無い訳です。なお、遺言の方法に自筆証書遺言もありますが、遺言として認められるための要件が厳しく、形式が不備なため無効になる場合がありますのでご注意ください。
 最近、相続を待たずに、新築を機に子に生前贈与する事例も増えています。従来、生前贈与は贈与税率が高く、とても実行できるような制度ではなかったのですが、平成15年に相続時精算課税制度が新設され、親が65才以上、子が20才以上の実親子であれば税務署評価2500万円以内なら非課税 (2500万円超過分には20パーセント課税) となり、この制度を利用する方が急増しているようです。翌年期日内に贈与申告書と相続時精算課税選択届出書を提出しておけば、相続を待たず完全に贈与されたことになるのです。
 親の土地上に子が新築する場合、その子は当該土地を自分の所有のような、少なくとも将来自分の土地になるだろうという期待を持つのが普通です。親もそのようなイメージでその子に建築を認めた事例も多いでしょう。ところが何年・何十年と月日が経過し、相続が発生したとき正式な遺言が無ければ、相続人全員 (戸籍上の子供等) の協議が整わない限り当該土地の所有者は確定しません。親の死亡後、仲のよかった子供達の関係がギクシャクする場合が少なからずあります。
 もちろん相続人が単独である場合や、既に他の相続人に引き継がせる旨の遺言をされているなど、親の意思が法的に明確にされているなら,ことさらに遺言の必要はないでしょう。
 また、これらの手続はあくまで土地所有者である親の自由な意思で決定するもので、贈与や遺言を子が親に無理に求める性格のものでは有りません。しかしながら、家事調停の場で兄弟が遺産分割で争う場面を数多く見てきた私といたしましては、子供の一人が親の土地に新築する事案には、是非、相続時精算課税制度を利用し、将来に問題を残さないことをお勧めしておきます。
 尚、詳細は割愛しますが、遺言の場合は生前贈与と違い遺留分の問題が若干残ります。
 
●普通建物と区分建物

 住宅業界では親と同居することを、二世帯住宅と表現する時もあるようですが、ここではあくまで法律上 (登記上) の区別として、普通建物と区分建物の違いをお話しします。
 見た目一棟の建物で登記上もひとつの建物を普通建物といいます、1階200m²・2階200m²の建物は床面積400m²のひとつの建物ですから所有権も一つです。この建物を複数で所有ということになりますと、これは各人が建物全体を持分にて所有する形態を取ります、1階は親が居住するので親の所有、2階は息子夫婦が居住するので息子の所有、これは出来ません。400m²の建物を親と息子が各2分の1共有する形でしか登記できません、抵当権設定するに際しても、全体に設定するしかなく、1階だけとか2階だけとは抵当権設定はできないのです。全体を物理的にも、法律的にも一つと考えるのが普通建物と言います。
 これに対して法律上の区分建物とは、見た目は一つなのに法律上 (登記上) は二つの建物となる建物のことです。子が2000万円ローンを組み1階200m²に住み、親が2000万円を出資し2階200m²に住むというような事例では、1階部分をA区分建物、2階部分をB区分建物とし、A建物の所有は子、B建物の所有は親とするといいでしょう。区分建物にすることによって、400m²の普通建物共有所有では受けることが出来ない不動産取得税の控除が可能になります。50m²以上240m²以下であれば軽減措置を受けることができ、建物の評価額から1200万円が控除されます。つまり区分建物にすればA区分、B区分共に控除を受けることができるのです。1階と2階とも同じ所有者でも1階を賃貸し、2階に居住するような建物なら、区分建物にすることをお勧めします。2階の建物が専用住宅と認定されるからです。普通建物で登記すると、建物の種類として全体が共同住宅とか店舗居宅になってしまいます。
 さて区分建物として登記する為には、それぞれの区分建物が完全に独立していることが、その要件となっています、つまり各々に入り口 (玄関) があり、基本的には建物内部で区分建物同士行き来ができない構造の建物であることが必要となっています。
司法書士
昭和26年
昭和47年 司法書士試験合格
昭和49年 同志社大学 法学部卒
昭和50年 神戸市にて司法書士事務所 開業
その後、土地家屋調査士・行政書士・社会保険労務士・海事代理士 各事務所 併設
平成15年 中尾パートナーズとして法人化
事務所設置場所
丸の内事務所
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