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第 46 回
【晴海トリトンスクエア物語 (16)】
大賞受賞! 深夜に働くトリトンのお掃除ロボット
-その2-

 前回に続き、昨年末「今年のロボット大賞2006」の大賞を受賞した晴海トリトンスクエアの“お掃除ロボット”のお話です。開発を担当された富士重工業 (株) 戦略本部・クリーンロボット部「青山 元 (あおやま はじめ)」部長と、住友商事 (株) ビル事業部「井上 弘毅 (いのうえ ひろき)」部長のお話を交えながら、その誕生秘話をご紹介しましょう。

●はじまりは空港で見かけた自動清掃機


 開発のきっかけは、井上部長が羽田空港で見かけた『人が横で操作する大型自動清掃機』でした。
 晴海トリトンスクエアへ本社移転を計画していた住友商事内では当時、地権者の方々と21世紀にふさわしい新しい事業をやろうという気概に満ちていたと井上部長はいいます。「うちは商社ですから、新しさだけではなく、つくった後もキチンと使えるものを探そうと思っていました。その一つとして清掃に注目したのです。トリトンは超高層ビルが3本も建てられ、多くの同じようなフロアがある。ならばエレベーターを独自に上下できる、羽田で見たようなロボットがあれば面白いと考えたんです」
 さっそく清掃器機メーカーを何社も探し出しましたが、なかなかうまくいきませんでした。
 そんな時に出会ったのが、工学博士でもある富士重工業の青山部長です。

●ロボットのノウハウを持っていた技術のプロとの出会い


 「私たちの部門は、自動車以外の様々な技術開発を行っている所で、その一つがロボットだったのです。当時は『真っ直ぐ走らせる研究』をやっていて、これを事業化するのに自動清掃機を考えていたんです。富士重工業では清掃機械を40年以上手掛けていたので、数多くのパテント (特許) も持っていましたから」という青山部長。
 7年前のこの時、同じ構想を持つ【技術のプロ】と【事業のプロ】の出会いによって、両者は「お掃除ロボット」の本格的な導入を決断したのです。
 プロジェクトが動き出すと、井上部長はある提案をしますこれまで当たり前だったハードタイルの床掃除ではなく、「カーペットを清掃するロボット」を開発したいと。
 オフィス用カーペットの開発や清掃事業の部門もある住友商事。ビル事業のプロである井上部長が投げかけた、技術のプロへの提案でした。
富士重工業 (株)
戦略本部・クリーンロボット部
青山 元 部長

●カーペットで外からの汚れを拭き取り、
それをロボットが掃除する!

 井上部長の考えはこうです。『(1) オフィスの汚れは、靴等について入ってくる外の汚れ (2) この汚れをエレベーターやホール、廊下などのカーペットで落とさせる (3) その結果、専用室内には汚れを持ち込まない (4) 廊下の汚れを清掃すれば、オフィス全体が綺麗に保たれる (5) だから、カーペットを清掃するロボットが重要である』。
 この要望に対し、富士重工業の青山部長が応えます。まずは吸引力を高めるために、ノズルの形状を研究。航空機の流体解析用コンピュータを使用して形状を決定しました。また最適なモーターを開発し、ロボットが一度その場所を通るだけで、カーペットの隙間に入り込んだ砂や埃、中々とれない人の皮膚のカスなどのゴミを吸い上げられるようにしました。

●エレベーターへの乗り降りのポイントはコミュニケーション


 エレベーターにロボットが自律的に乗り降りする技術開発は富士重工業でも行っていました。このとき住友商事より導入の話があり、共同で実用化を目指すことになりました。そして住友商事のコーディネートで、エレベーターを設置することになっていた三菱電機とのコラボレーションを実現しました。
 問題は、ロボットのコンピュータとエレベーターのコンピュータの連携、つまり違うコンピュータ同士のコミュニケーションでした。しかも、電線でつなぐのではなく、光信号でやりとりを行い、連続した動作をスムーズに行わなければなりません。しかし、そこは技術者同士。コーディネーターである住友商事のリードもあり、役割を分担。問題を解決し汎用性の高いプログラムを確立したのです。

●技術の壁とユーザー視点の割り切りの提案


 「実用化成功の最大のポイントは、割り切り」という井上部長と青山部長。技術者は、大きな問題にぶつかると、その壁を乗り越えるために徹底的にこだわります。そこが素晴らしいところです。しかし、それでは時間やコストがかかってしまいます。そこでデベロッパーである住友商事が、ユーザーの視点で「割り切り」を提案したというのです。顕著な例としては、ロボットは壁際200ミリの掃除は行わないこと。通常は隅から隅まで綺麗にしてくれというオーダーが多い中、その割り切りを明確にしたのです。カーペットの場合、人があまり歩かない壁際にゴミはたまらないのです。端のゴミは人が清掃すればいい。つまり、ロボットが全ての作業を行うのではなく、人とロボットの役割分担をはっきりさせたのです。
 これはロボットとエレベーターに加え、清掃を補完する人、ロボットを運用・管理する人、ビルを使う人をどう組み合わせて、清掃品質を上げながらどうコストバランスをとるかを総合的に考えた結果開発された清掃“システム”なのです。
住友商事 (株) ビル事業部
井上 弘毅 部長

●鉄腕アトムと鉄人28号の間が大事


 「鉄腕アトムと鉄人28号の間をいかなきゃ駄目なんです」という井上部長。アトムは全て自分の意志で動き、鉄人28号はリモコンで動かすロボット。その中間を狙わなければ、役に立つ、実用化できるロボットは生まれないというわけです。
 近い将来、このお掃除ロボットシステムをマンションなどにも導入するというお二人。今後さらに進化を遂げれば、老人ホームや公共施設など、様々な場所での活躍も期待できるそうです。
 いつか街でこのようなロボットを見かけたら、「その始まりは、晴海のトリトンだった」と思い出してくださいね。

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