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Housing Column ハウジングコラム

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第 56 回
「お得」はオトク!?
香取 玲子 (ファイナンシャルプランナー)

 毎日の生活のなかで『お得』という言葉をよく目にしたり耳にしたりします。
 例えばスーパーのちらしやTVショッピングの中の 今日のお買得商品
 定価より安い店・人より安い値段で購入できたらそれは嬉しいもの。
 ついつい興味をそそられ、挙句の果てに買わないと損してしまうような気がして、さして必要でもないものにお金を使ってしまった経験があるのは私だけでしょうか!?
 
 住宅ローンに関する情報でも『お得』の言葉があちこちに顔を出します。
金融機関のパンフレットには
保証料0円 繰上手数料0円で お得です!
お得な優遇金利△0.8%
 マンションのモデルルームへ行くと 「この物件はお買い得ですよ」の営業マントーク
 書店に並ぶ タイトルに「お得な・・・」が付けられたマネープランの著書

●お得には理由 (わけ) がある

 これまで電話での相談業務を含め多くの方々と住宅ローンに関わるお話をさせていただきましたが、お客様からも
「これから金利が上がるのだから今のうちに借入したほうがですよね」
「固定金利と変動金利どちらがお得ですか?」
お得なお勧め金融機関はどこですか?」
といったご質問を数多く受けます。
 住宅の購入は生涯のうちで最も高額なお買い物。日常生活でお財布の中からちょっと支払うというわけにはいきません。だからこそ自分にとっていちばん有利な条件の住宅ローンを利用したいと切望するのは当たり前です。
 しかし、利益を追求する金融機関が借手にとって一見『お得』と思われるローンを提供するにはそれ相応の理由があるはずです。『お得』な条件はどうして可能なのか? 他にデメリットはないのか? その本質を見極めなければなりません。
 例えば、
  • 金利が低い分、手数料など他の項目での支払額が多い
  • 優遇金利が受けられる期間が短い。もしくは終了したあとは金利選択ができない
  • 保証人・保証料は不要だが、団体信用生命保険は自己負担
などなど・・
 食料品なら賞味期限間近とか、衣料品ならサイズ・色限定とか「お得」の理由が比較的はっきりしています。しかし一方住宅ローンに関してはそのしくみが複雑で、要因と考えられるものが多岐にわたっているため判りにくいのです。しかし、『お得』という言葉だけに踊らされず、その条件をじっくりと冷静に見つめてみると『お得』な理由が案外すんなりと見出せるものです。

●あなたにとっての『お得』とは?

 また、住宅ローンは利用者側の条件も様々。年齢・家族構成や年収、さらには、どのような生活を送りたいのか?子供にどのような教育を受けさせるのか?といったライフスタイルの違いなど千差万別ですし、お金が必要となるタイミングも異なります。Aさんにとって『お得』な条件がBさんにも当てはまるとは限らないのです。
 
 例えば、金利上昇が予測されている今日、長期固定金利がお得という情報の影響から全期間固定型を選択する住宅ローン利用者が増加しています。確かに今後金利が上がっても返済額が変わらないため、安心で安定した返済計画をたてることができるという大きなメリットがあります。しかし返済期間の短い方や、住替えによる転売や退職金での早期一括返済が予測される方にとっては、借入時の金利差を考えると必ずしも得策とはいえないのです。
 私たちは今や金融機関や住宅情報誌、インターネットなどを媒体として住宅ローンに関する膨大な情報を得ることができます。しかし、その情報を鵜呑みにせず、自分にとって本当に必要なものを取捨選択する勇気が必要です。

●『お得』の威力

 繰上返済はお得はいまや当たり前。その勢いはとどまるところを知りません。
 借入される前から「毎年100万円ずつ繰上返済するつもりなので、いくら得になるかを知りたい」とおっしゃり、減額できる支払利息の金額を確認するためのシミュレーションを依頼された方がいらっしゃいました。その決意みなぎる口調から
「借入金額の減額や返済期間の短縮についても検討されましたか?」とお聞きする間もなく・・・
 では繰上返済は本当にお得なのでしょうか?
 確かに返済するお金は全額借入元金に充てられますから、契約上支払わなければならなかった利息分の負担は減ります。しかし過度の繰上返済を行ったために、不測の事態が起きたときにお金が足りなくなって、やむなく別の高金利のローンを組む羽目に陥っては元も子もありません。先行きを見据えながら検討することが大切です。
 また、以前返済期限前に一括返済する場合の決済金額の照会を受けたときのことです。現在の借入残金と前回返済日からの経過日数分の利息の合計額であることをご説明したところ、「まけてもらえないの。全然お得じゃないじゃない」とご不満の様子で電話を切られてしまった経験があります。『お得』が飛び交う繰上返済熱にあおられ、借入元金そのものまで減額してもらえると勘違いされていたようです。
 
 『お得』という言葉はとても魅力的! ついつい引き込まれてしまいます。
 しかしどんなからくりが潜んでいるか、落とし穴が隠されているか判りません。
 私たちは、その情報の真偽を確認し、その内容を正確に理解して、自分自身にとって本当にふさわしいものであるかどうか判断できる力を養っていきたいものですね。

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