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Housing Column ハウジングコラム

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第 62 回
外からできる家
長尾 亜子 (一級建築士)

●私たちの風景

 都市住宅は<大草原の小さな家>のように風雨に耐えるだけではなく、自然環境以外の周辺状況とも折り合いをつけて計画されます。例えば道路からの視線が気になる、お隣が日影になっては申し訳ないというようなものです。自治体が設定している高さ制限や用途地域も良好な住環境を確保する目的で作られた街並のルールです。そしてそのルールに従って各々が家やビルを建てており、言い換えれば普段何気なく目にしている街並は、住人である私たち自身が作っている『風景』なのです。
写真はクリックすると拡大します。

 私たち建築家が住宅を設計する場合、家の使い勝手だけでなく、周辺の状況や間取りを総合的に判断して計画を進めていきます。気遣いの多い作業ですが、きちんと考えて行くと今までとは少し違った街並が現れてきて、苦労の甲斐があったなあとしみじみ思います。

●街の中の住宅

 「府中の家」では、クライアントの地域に対する考え方が興味深く、それが配置計画に現れています。敷地に余裕があり駐車場を2台分設けていますが、それは自分たちのためではなくご近所で緊急の時に提供するものなので、塀は無く建物も道路からかなり奥まっています。ポンと置かれたそっけない外観ですが、ゆったりとしているので、塀を廻らし敷地に籠ってしまうものとは違う呑気でカワイイ風景になりました。考え方を変えると街並も変わってきます。

●屋外のような屋内

 そうした外との関わりもあり、屋内から直接出ることのできるテラスは設けていませんが、代わりに屋外のような住空間としました。隣の部屋同士だけでなく上下階の関係を考えた2層分の大きなワンルームにして、1階に居ても雲が流れる青空が見える大きなトップライトと風景が見える窓をあちらこちらに設け、まるで屋外に居るような感覚を作り出しています。そして壁の代わりに家具で仕切り、更にのびのびとした空間になっています。街との関わりがインテリアの風景も変えていきます。

●デメリット?メリット?

OHの配置+平面図
作成:長尾亜子建築設計事務所
 「OH」では極端な旗竿敷地のため、道路からは家の中が見ようと思っても見えません。そして北側のお隣さんの庭がゆったりと緑こんもり。なので配置方法と窓の開き方を工夫しました。普通は北側は敷地境界線ギリギリまで近づいて南側を出来るだけ広くするのが一般的ですが、お隣の緑も少し飛び出していますし、北側を広めに取りました。そして道路からの目線が気にならないので風が抜けるように窓をいっぱい取り、印象的な庇のような外壁のような頭でっかちの外観にしました。そのおかげで夏は暑い陽射しを遮り、南北に風も抜けます。少し我慢すればエアコンをつけなくても扇風機で大丈夫です。冬は陽射しが低いのでたっぷり入りますし、窓にカーテン代わりの折戸を設けたので暖かく過ごせます。北側の庭は嫌われますが、お隣の木の枝も切らずに済みましたし、ドングリ拾いもできるお子さんの良い遊び場所になっています。
 
 最初は敷地条件から工事が難しくなり、それに伴う問題が多く発生することを心配しましたが、最終的には気持ちのよい住宅となりました。一般的にはデメリットと思える状況も目線を変え丁寧に対応していけば大きなメリットになっていくのでしょう。

●都市に住む楽しみ

 人が集まって賑やかな都市空間に住む場合、どうしても周辺との関係を考えなければなりません。かといって他人に気を遣ってばかりでも、それはそれで疲れてしまいます。お互いに良い形になるよう折り合いをつける方法を時間をかけて発見していく、それが都市に住む楽しみではないでしょうか。そしてまた都市の中に魅力的な<家の風景>を作って行きたいと思っています。
一級建築士
東京生まれ。多摩美術大学建築学科卒業。妹島和世建築設計事務所を経て長尾亜子建築設計事務所を主宰。住宅、商業施設、展示デザイン、家具など空間に関わる設計活動を行っている。新築だけでなく改築・改装も手掛け、蓄積された社会資産をデザインによって活用。08年よりデザインショップ・リノベーションデスクに参加。
「府中の家」
ゆったりした佇まい
1階から空が見える
2層分のワンルームはゆったりしている
南北に窓をいっぱい設けている
「OH」
頭でっかちな外観
折れ戸越しに木々が見える
お隣の樹木が目に気持ちよい
写真:淺川 敏
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