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遺言のススメ ~ 親の土地に子が家を建てる場合 ~ - 越智 研介 (司法書士)
第 63 回
遺言のススメ
~ 親の土地に子が家を建てる場合 ~
越智 研介 (司法書士)
晴海デザインセンターで住まいの法律・登記相談を担当している中で、毎回必ずと言ってよいほどにご相談いただくのが「親の所有している土地に子が家を建てる」という住まいの計画についてのことです。このようなケースで考えていただきたい事があります。それが「遺言」です。
「遺言」…その言葉のイメージはどのようなものですか。大金持ちのお年寄りが亡くなって、お葬式で突然「遺言書」を発見。それが原因で家族の間で大騒動に・・・というテレビドラマのようなイメージをもっている方もなかにはいるかもしれませんね。「遺言」→「相続」→「争い事」というネガティブなイメージです。しかし、実際には「遺言」は全くそのようなものではないのです。遺言者の意向を明確にすることによって、相続時の無用な争いを防ぐ、というとなんだか難しくなってしまいますが、要は「相続時に困ったことにならない様にしておく」ということだと思います。最近では理解も広がっていて、公正証書遺言 (数種ある遺言方法のひとつ) を作成しておく人の数は、年間7万人強 (平成18年。日本公証人連合会統計。) といわれています。年々「遺言」をする人は増えているようですが、現在は核家族化が急激に進んでいる事も考えると、まだまだ少ない数値だと思います。そこで、今回は法律上の「遺言」についての説明、具体的事例での遺言活用法を紹介したいと思います。
●遺言の種類
さて、遺言について規定されている民法をみてみると、はじめに「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。」と決められています。ということは、定められた方式に従って作成されたものでなければ、法的に効力のないものになってしまうのです。「書き置き」的なものは法的に意味のないものであることが多いのです。ではどのような方式かというと、主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
まず「自筆証書遺言」ですが、これはまさに文字通り、遺言書を全文「自筆」で書く方法です。遺言をする本人が全文を自書し、日付を入れて署名捺印しなければいけないので、ワープロを使ったりすることはできません。自分で作るので費用がかからず、いつでも自由に遺言書を書くことができるところがメリットですが、「自筆証書遺言」としての要件を満たしていないものも多く、自分で保管もしなければいけないので、ある意味でリスクの大きい方法といえます。作成する場合は、すくなくとも専門家に相談するかアドバイスを受けたほうが良いと思います。
次に「公正証書遺言」というのは、「公証役場」という公的機関の「公証人」に作成してもらう方法です。遺言する本人に代わり公証人が遺言書を作成するので、最も安全で確実な方法である上に、作成された遺言書原本は公証役場に保管されるので安心できるのが大きなメリットです。公証役場まで出向くのが難しい場合でも、公証人に出張してもらうこともできます。自筆証書遺言に比べて費用がかかりますが、総合的に考えると、いちばんにお勧めできる方法です。
最後の「秘密証書遺言」は、公正証書と同じく公証人が作成しますが、遺言の内容を公証人も確認せず、本人だけの秘密にすることができるというものです。あまり需要がないのか、この方法はそれほど使われていません。
このようにそれぞれメリットとデメリットがあるわけですが、やはり確実なものを作ることが大切だと思うので、私としては「公正証書遺言」がお勧めです。
●遺言活用法 ~親の土地に子が家を建てるケース~
「親の所有している土地に子が家を建てる」という住まいの計画は、そのこと自体は特に問題もなく、法的には親子が土地を使用貸借 (無償で貸借すること) するということになり、これは通常よくあることでもあります。ただ、このようなケースで考えていただきたい事があります。それは、将来に相続が起き、相続人が複数の場合、この土地が原則として相続人全員の共有になってしまうという事です。共有状態になると各共有者がその土地の使用を主張できるということに一応なってしまいます。今までその土地に定着して生活をしてきたところに、突然そのような問題が出てきます。思わぬ利害関係人の主張が発端で、争いにまでなってしまうということもあるかもしれません。そんな状態は望ましくないので当然避けるべきです。こういったケースのように、親の土地上に子が家を建てており、親もその子に土地を継がせる意思があるような場合にこそ「遺言」を活用するとよいと思います。例えば、その子に不動産(当該土地)を相続させ、その他の財産(預貯金等)は他の子に相続させる、と遺言しておけば誰が何を取得するかが明確になり、家を建てた子は敷地である土地を単独取得できることになります。相続人間で遺産分割協議をして同じように財産を取得することも出来ますが、予め「遺言」しておくことによって、継がせるほうも、継ぐほうも「安心」できるのではないでしょうか。
「遺言」とは要するに誰かに対し「遺すべき言葉」。それは直接には遺すべき「モノ (財産)」が対象になりますが、本質には遺言者が平穏な家族を想う「心」があるものだと思っています。広い意味で「遺言」はそういった「想い」を積極的に伝える手段でもあるのです。
司法書士
つくば市出身。司法書士法人中尾パートナーズ勤務 (アソシエイト)
不動産登記法務の他、相続・遺言・成年後見等にも積極的に取り組む。
東京司法書士会員。(社) 成年後見センター・リーガルサポート正会員。
中尾パートナーズ
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