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第 72 回
キーテクノロジーについて-1
徳川 宜子

 住宅を設計するプロセスを考えてみると、まずクライアントからの様々な要望、法的規制から得られる敷地のポテンシャルからスタートします。大概の場合、それらは依頼を受けた建築家にとって矛盾した内容であり、すべてを満たすには不可能と感じられる場合さえあります。そこで、それらを解決できるコンセプトを考案することになります。このコンセプトとはプロジェクトごとにその発想の骨格となるようなものです。
 一般的に設計上のコンセプトというと、建築をプログラミングするプロセスの中から生まれてくる特殊解のことを示しています。それは建築が実際に竣工するまでに乗り越えなければならないハードルを越えるための手段でもあります。クライアントの事情、設計上の事情、施工上の事情などから、地域性・環境性・機能性・空間性・快適性・経済性・時代性など様々な事情があげられます。したがって敷地に高低差があることや、既存樹木を保存することなど固有の事情によって構想されて行きます。それらを如何にして乗り越えられるのか、その鍵がコンセプトになるといえます。
 その一方で、オフィス、工場、住宅など建築の用途にかかわらず一貫した傾向を表す要因をキーテクノロジーと表現します。キーテクノロジーとコンセプトの違いは、コンセプトはプロジェクトによって変化するものですがキーテクノロジーは変化しないものということです。言い換えれば、キーテクノロジーは建築の与条件が変化しようとも貫くことのできる技術やデザインのことです。したがってプロジェクトごとに生成されるものではなく極めることのできるものです。住宅などの用途もキーテクノロジーのひとつですが、コンクリートの打放しなどの素材であるとか、和風などの様式性、あるいは省エネルギーや構法、ローコストなど、幅広い分野がキーテクノロジーに成り得ます。それだけに、完璧にひとつのキーテクノロジーで通す建築家もいれば、いくつかのキーテクノロジーを複合させる建築家もいます。そこで今回は構造ハイブリッド、次回は環境ハイブリッドとディテールハイブリッドという3つのキーテクノロジー基づいてプログラミングした建築と住宅をご紹介します。

●構造ハイブリッド

 構造体は単に空間を安全に構築するための隠れた存在と考えられがちですが。力の流れを、ある時は繊細に、またある時は力強く表すことで空間と一体となった表現が可能です。力の流れをフォルムとしてコンセプトを強調することや、構法を融合させることで新たな空間表現を獲得することが出来ます。また、木を美醜の対象としてではなく構造要素と見なし、その可能性をも追求しています。そこでキーテクノロジーを構造ハイブリッドとして豊かな空間を構成した、建築としては教会を住宅としては共同住宅を事例とします。

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建築 / 日本キリスト教会 習志野教会
 
 この教会は習志野市中心部に近い住宅街のはずれで、比較的自然の残された場所に位置しています。折り鶴のような屋根は、矩形の平面に屋根を斜めに架け渡したもので、立面にも抑揚を与えています。この屋根を支えている構造体は、最長11m V字形の柱間をスチールフラットバー厚9mm×300mmを集成材50mm×350mmで挟み込んだ鉄骨と木を組み合わせた梁で架け渡したものです。また、南に向かって45度の屋根勾配は太陽熱を利用するソーラーパネルの受光面として機能させるためです。
 礼拝堂は最も重要な領域であり、その場を構築するために天空から降りそそぐ光が響き合う空間を意図しました。特に宗教的な要素を組み込んで演出したわけではなく、光をデザインすることで精神性を表そうと試みたものです。東南に向けて対角上に上昇する天井と外壁との間に設けた高窓から採り入れた光は、白い空間で反射を繰り返しながら礼拝堂に満ち溢れてきます。結果として、人々が集い、そして光に包まれる空間が完成しました。

写真撮影:村井 修
住宅 / 御幸山の双曲
 
 緩やかに起伏のある地形の北斜面に位置している敷地の特徴を活かし、造成で平坦にするよりも、斜面地に擦りつくよう下階に貸室、上階に住居を配した共同住宅を計画しました。斜面地を活かしたことで下階の貸室では床レベルが段状に構成されて各室の独立性が高まり、上階の住戸では開放性とブリッジから庭へつながる接地性を獲得できました。
 周囲の住環境を阻害しないよう、庭を緩衝帯として開放することで周辺環境と共有したため、防御的になりがちな近隣関係に新たな距離感も生まれています。建築主の息子2人の個室は貸室として設計することで、経済的なリスクの軽減と将来のライフスタイルの変化にも柔軟に対応できるプログラムとしています。上階の居住空間は、居間から和室を経由して寝室までのレベル差を取り込んだ連続空間です。屋根がHPシェルを描いて上昇し、一体感のある空間を構築しています。この連続空間の屋根架構は、柱間6mをスチールフラットバー厚6mm×175mmをツーバイフォー用の木材2inch×8inchで挟み込んだ鉄骨と木の合成梁で架け渡したものです。内外ともに軽快感を表現し、屋根が斜面に呼応している形状を印象づけました。
写真撮影:村井 修
二級建築士
東京都生まれ、東洋英和女学院短期大学卒業、大成建設株式会社を経て石橋利彦と株式会社石橋徳川建築設計所設立。東京建築士会評議員。東京YMCAデザイン研究所講師、共栄学園短期大学講師。主な著作:住まいの図書館「相関のディテール」、BNN「建築家のワークスペース」。主な受賞歴:住宅建築賞、千葉市優秀建築賞
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