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Housing Column ハウジングコラム

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第 73 回
キーテクノロジーについて-2
徳川 宜子

 建築の設計や街づくりなどの仕事に携わる人は、時としてヒューマンスケールという言葉を口にします。なぜヒューマンスケールなのかというと、それらの仕事すべてに関連しているのが人間であり、建築も街も人間と切り離すことのできない存在だからです。しかもヒューマンスケール自体が様々な意味合いを持ち、あるときは身近な尺度として、またある時は工学的な寸法体系として解釈されます。ですから、人が安らかに眠る寝室から人が活躍する大都市までひとつの言葉で表すことができるのだと思います。これを建築的に言い換えれば、人間とそれを取り巻く空間がすべての基本単位になるということなのです。
 このヒューマンスケールのように、用途や目的が変わろうとも一貫して用いることのできるものをキーテクノロジーと表現しています。一般的な設計手法として、建築家が与えられた余条件を克服するために考えるプロジェクトごとの発想をコンセプトだとすれば、キーテクノロジーは建築の条件が変化しようとも貫くことのできる技術やデザインのことです。そこで前回の構造ハイブリッドに続き、今回は環境ハイブリッドとディテールハイブリッドというキーテクノロジーをご紹介します。

●環境ハイブリッド

 環境ハイブリッドとは、用途にかかわらず人間が生活する上での快適性は同質であるべきとの考え方に基づくキーテクノロジーです。したがって、建築だからといって力任せに冷暖房を行って快適性を獲得するのではなく、住宅同様にさりげない熱を逃さないヒューマンスケールな空間を目指しています。ここでは、コンクリートを単なる構造体として扱うのではなく、外側に断熱を施す外断熱構法によって躯体へ蓄熱し、大きな熱容量で温度差の少ない安定した空間としています。また、床吹出空調・天井面輻射冷暖房など人に優しい空調システムを採用した建築と住宅です。

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建築 / 米澤工機宇都宮支店
 
 この建物は、意匠・構造・設備を統合した設計手法で、シンプルな執務空間を実現しました。外観を特徴づける外壁から屋上にまで突き抜けた門型のフレームは、RC耐震壁付ラーメン構造による厚300mmの壁柱と梁のないフラットスラブによって構築しています。
 執務空間は、柱や梁を突出させない構造形式と床から天井までの開口部、また空調機を露出させない床吹出空調などの構成要素を少なくする技術によって獲得しました。床吹出空調はH=200mmのOAフロア内に温風と冷風を吹込み、床面から吹出すシステムです。500mm角の床ユニットを移動することで、レイアウトの変更にも容易に追随できます。また外断熱や屋上緑化を行うことで建物全体を包み込み、わずかなエネルギーを最大限に活用する環境へ配慮した計画としました。

(PDF)
住宅 / オヴァンコルの家
 
 樹齢600年を越すオヴァンコルを活かすことを前提に、室内環境を構築しました。原木を板に挽いてから15年以上乾燥させたものを幅900mm×長さ5000mm×厚さ35mmの床材として使用しています。床材としたのは、原木からの加工工程が少なく、巨木が持つ自然の迫力を最も伝えやすいと考えたからです。
 室内環境は、冷暖房時の木に対する悪影響を回避するため、外断熱による躯体蓄熱を行い温度差が少なくなるように努めました。冷房では木の表裏の状態が近づくようにリターンを床下でまわし、暖房はジョイストスラブ天井面からの輻射暖房としています。オヴァンコルに最適な環境を創ることが、人間にとっても快適な住空間となっています。
(PDF)

●ディテールハイブリッド

 ディテールハイブリッドとは、建築と住宅の区別なく、建材の性能を見極め、最も相応しい使い方をしたディテールのことです。ここでは外壁技術であるカーテンウォールを、コンセプトを際立たせるためのキーテクノロジーとして活用した建築と住宅を事例とします。

建築 / 米澤工機福島営業所
 
 福島の夏は高温で暑く、冬は寒さが厳しい内陸性気候を呈しており、恒風位が西風である厳しい条件です。
 外観を形成するゲート型の躯体は、四隅の柱以外はすべて斜め柱としたブレース構造で構築しています。この形状は恒風位に対する風穴として風揺れを防止しています。また空間構成としては、便所と機械室以外に扉がない連続した一室空間に、カーテンウォールで覆われた吹抜を介在させることで分節を与えています。

住宅 / I邸
 
 窓は内部と外部を隔てるものでもあり、同時につなげる存在です。道路から遮るもののない大開口は、下部を内側に呑み込んで斜めに設置したカーテンウォールによって構築しています。斜めにしたことで、門型フレームが庇状に夏期の日射を防ぎ、1階外部と2階内部の双方に適度な空間を設えて街並みとの間に距離感が生まれました。さらに街行く人が映り込まないので圧迫感を与えません。
 構造は木造在来工法にスチールブレースや金物を組合せた木造ハイブリッドによる門型フレームです。カーテンウォール部の耐震要素としたブレースは、あえて2本とすることで細く透過性の高いブレースとしました。設備は1階の床スラブに温水パイプを埋設した蓄熱床暖房です。この輻射によって連続した居空間の快適性を支えています。

二級建築士
東京都生まれ、東洋英和女学院短期大学卒業、大成建設株式会社を経て石橋利彦と株式会社石橋徳川建築設計所設立。東京建築士会評議員。東京YMCAデザイン研究所講師、共栄学園短期大学講師。主な著作:住まいの図書館「相関のディテール」、BNN「建築家のワークスペース」。主な受賞歴:住宅建築賞、千葉市優秀建築賞
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