My Life,My Style
home>Housing Column>住まいと暮らしのハウジングコラム>「未完成な強い家」 永く耐えるプランニング
  • Navi Menu
  • Housing Column
  • ハウジングコラム
  • 専門用語ナットクコラム
  • 雑学探検隊
  • HAPPYジャーナル
  • 番外編 住まいづくりのプロの視点

Housing Column ハウジングコラム

バックナンバー
住まいと暮らしのHousing Column
HOUSING COLUMN
第 75 回

「未完成な強い家」
永く耐えるプランニング

古見 演良 (一級建築士)

  “より長く快適に暮らすことができる住まい”が現在求められています。その好例として、多くの賞を受賞した“未完成な強い家「トール」”があります。「トール」は、どのような住まいで、設計者がどのように考え設計したものなのでしょうか?設計者である一級建築士 古見演良氏のコラムをご紹介します。

 いま、住宅の高耐久テクノロジーは進化しています。これからの「家」は100年、あるいはそれ以上の年月に耐えていくのです。でも、そのためには「家」のハードな面ばかりでなく「家」のソフトな面も高耐久でなければ、ほんとうの高耐久住宅にはなりません。家族の変化、ライフスタイルの変化に対応した家づくりが必要です。そのとき「階段」「設備」「収納」は、フリーな間取りの「家の形式」を決定するための重要な要素です。そしてそれらには強い構造が不可欠です。完成された形をつくるのではなく、どのような変化にも対応できる「未完成な強い家」が、永く耐えるプランニングが、求められているのです。私たちが設計した家をお手本にしてお話します。

*

「トール」 変わる家族のカタチにフィットしていく家

「トール」 変わる家族のカタチにフィットしていく家

 結婚されて、お子さんが生まれた頃に家を建てたいと、計画が始まりました。限られた予算の中で、これから変化していく家族や生活にどのように対応していったら良いのか。手探りのスタートです。相模川の高台にある敷地環境から、「丹沢の山並みを楽しみたい」「庭があったら家庭菜園をやりたい」「シンプルな間取りの家が良い」などが要望でした。

 

「小さな家-物の風景」

 山並みを眺める計画をしているうちに、「外の風景」だけでなく家の中の生活の「物の風景」をデザインすることにしました。小さな家では、小さいがゆえに、「人」と「生活の物」との距離が近い。生活の物が散らかっていると、すごく乱雑に感じます。だけど収納をたくさん作れば、収納のボリュームにとられて、小さな家はもっと狭くなってしまう。だから生活の物を、隠す物と見せる物に分けました。そして、見せる収納を「物の風景」ととらえるのです。「物の風景」は「外の風景」とのバランスや使い勝手などにより場所を決定し、「物」を集約してキレイに見えるようにデザインしました。「外の風景」「物の風景」を浮き立たせるため、家はシンプルになっています。

小さな家-物の風景

「コンセプト」

 要求されたボリュームは、将来のロフトも含めて30坪。私たちはそのボリュームを、上下二つのサイコロ(キューブ)にして積み上げ。遠くの山並みが望める「トール」(背が高い)にしました。

「コンセプト」

*

「小さな家-物の風景」

「強い構造」

 「トール」はいわゆる在来木造構造です。大きなスケルトンを形作るため、強い構造をスタディしています。下のサイコロは上からの垂直荷重に耐えるため、まんなかの廻り階段を強い筒にして、超高層ビルなどに見られるダブルチューブ構造にしています。上のサイコロは台風などの強い風圧力に耐えるため、モノコックなリブ形式にしています。

ダブルチューブ構造 大小二つの筒を組み合わせて配置することで、大きな空間が上からの垂直荷重に耐えられるようにした構造です。超高層ビルではよく使われています。
モノコックなリブ形式 現代の自動車ボディを想像してください。骨組みだけで衝撃に耐えるのではなく、ボディを形作るパネル面も合わせて、より強い構造にする方法です。 建築の場合、柱、梁、筋交いなどの骨組みだけでなく外壁面や、リブ状に配置された内壁やバルコニーボックスも全体の構造に組み入れます。

「制振構造のための試み」

 背の高い家が地震などの強い揺れに耐えるため、建物の上から下まで通しボルトで締め上げています。木造固有の大きな揺れを制御し、地震、台風などによる揺れを極めて小さく、短周期に抑えています。

「ドーナッツのワンルーム」

 長い期間で建物を使っていくことを考えて、1階上部にロフトを増築可能にしたり、エレベーターを設置する場所をあらかじめ設定しています。また、ベビーカーや車椅子を考えて、アプローチをスロープにしています。一階はドーナッツのような廻れるワンルームとなっています。不思議な気持ちよいスペースです。将来は二つの部屋にわけることが出来ます。

図は全てクリックで拡大します。

構造断面図

構造写真

「ドーナッツのワンルーム」

「キッチンが中心のリビング-物の風景」

 2階リビングはシンプルなワンスペースですが、キッチンを中心に展開しています。北側上部のトップライトから光りが落ちて、リビング全体が明るく気持ちよいです。奥には生活の物が置かれた「物の風景」と、ダイニングテーブルそばの「外の風景」がならんでいます。

「ドーナッツのワンルーム」1F平面図

「キッチンが中心のリビング-物の風景」

2F平面図

「一体化されたバスルームとユーティリティ」

 3階L字のバスルームとユーティリティはたいへん使い勝手が良いです。バスタブ上部のトップライトが気持ちよいバスルームをつくっています。ユーティリティ上部の可動式トップライトから屋上に上れます。将来、木製デッキと手摺を設置して、屋上はどんな使われかたになるんでしょうか?楽しみです。

「一体化されたバスルームとユーティリティ」

*
3F平面図

「環境性能の試み-空気強制循環」

 フリーなプランニングの家は、室内環境を家全体で考えていくべきです。1階から3階までの高い階高により発生する上下間の温度差を緩和するため、夏、冬で切り替えが可能な双方向換気システムを設計しました。一般的な換気扇は一方向しか送風できませんが、双方向換気扇を室内に設置することにより、夏は1階床付近の冷気を2階リビング上部へ、逆に冬はリビング上部トップライト付近の暖められた暖気を1階床へ送風することで、合理的な空調計画を実現しました。

 「トール」には、永く使い続けていくためのアイデアがたくさんつまっています。「トール」はいつまでも完成することはありません。ずーっと未完成であり続けるのです。そう「未完成な強い家」として。「トール」がこれからどのように変化していくのか、住む人も、設計した私たちも楽しみです。

*
夏換気

冬換気

プロフィール

住宅設計のスペシャリストとして活躍、TVや雑誌でも紹介され、受賞歴も多数

古見 演良氏

[経 歴]
1955年 東京生まれ、1979年 東京電機大学建築学科卒業、1984年 千包建築研究所一級建築士事務所開設、2002年 プラステイクに改組、1997年~東海大学講師、1993-96年 東京電機大学講師

[受賞歴]
1998/1999年 東京建築士会「住宅建築賞」最優秀賞受賞/「日本建築学会」作品選奨受賞(F-HOUSE 2)、1999年 東京建築士会「住宅建築賞」連続受賞(F-HOUSE 3)、2001年 和歌山県 未来の木の家「きのくにデザインコンペティション」受賞、2007/2008年 東京建築士会「住宅建築賞」受賞/神奈川建築コンクール受賞/第11回TEPCO快適住宅コンテスト/「日本建築学会」作品選集受賞(トール)

プラステイク一級建築士事務所
協力: (社)東京建築士会

ページTOPへ
Copyright (c) Sumanavi Center All Rights Reserved.