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HOUSING COLUMN
第 76 回

「未完成な強い家」
永く耐えるプランニング 【第2回】

古見 演良 (一級建築士)

  “より長く快適に暮らすことができる住まい”が現在求められています。第75回のコラムでは、プラステイク古見演良氏による“未完成な強い家「トール」”をご紹介しました。今回は、“未完成な強い家”の2回目です。

 いま、住宅の高耐久テクノロジーは進化しています。これからの「家」は100年、あるいはそれ以上の年月に耐えていくのです。でも、そのためには「家」のハードな面ばかりでなく「家」のソフトな面も高耐久でなければ、ほんとうの高耐久住宅とは成りません。家族の変化、ライフスタイルの変化に対応した家づくりが必要です。そのとき「階段」「設備」「収納」は、フリーな間取りの「家の形式」を決定するための重要な要素です。そしてそれらには強い構造が不可欠です。完成された形をつくるのではなく、どのような変化にも対応できる「未完成な強い家」が、永く耐えるプランニングが、求められているのです。私たちが設計した家をお手本にしてお話します。

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「ストレイジキューブ」 (ハウス K) 新しい収納のかたち

結婚を期に、家を建てたいと依頼されました。要望は「物が散らかっていないシンプルな空間、快適な生活がいい」、そして「物を片づけることに追われるのもいや」でした。相反する要望をどう解決するか。でも、ここに「新しい快適な家」のヒントがありました。

「発想の転換ー新しい収納のかたち」
「片づけるのはいや、でも、散らかっていない生活がいい」

矛盾する問題の答えを出すために、私たちは固定観念をはずして考えていきました。大きく二つの固定観念をはずしています。生活と収納の関係、方位(東西南北)と光の関係の二つです。「ストレイジキューブ」はリビングフロアとスリーピングフロアの2層構成です。上はスリーピングフロア、比較的暗くなりがちな下は天井高さのあるリビングフロアとして、また、南側の窓だけに採光をたよらず、あらゆる方向に開口を設けて、家全体での明るさや開放度を均質にしました。
そして家の中心に巨大な収納(ストレイジキューブ)を置き、その周りで展開される、「物」から開放された「散らからない生活」をつくりました。さまざまな生活の変化にも対応できるプランニングです。

家の中心の巨大な収納(ストレイジキューブ)

家の中心の巨大な収納(ストレイジキューブ)。その周りに展開する1階リビングフロア、ダイニング、キッチン、ソファコーナー。巨大な収納から突き出てM2階に浮かぶ、バスルーム(右側)、タタミルーム(左側)が見える。

1階リビングフロア

1階リビングフロア。ソファコーナー、キッチン、ダイニング、そして大きな窓が北側デッキへとつながっていきます。北側ダイニングも明るく、開放感があります。
キッチン左の入口から「ストレイジキューブ」へ、すぐそばにキッチン物入れや冷蔵庫があり使いやすい。キッチン上部には、浮かんでいるタタミルームの地窓が見えます。

アイランドキッチンも収納量たっぷりで機能的です。

アイランドキッチンも収納量たっぷりで機能的です。

ダイニングより北側デッキとM2階に浮かぶバスルームを見る。階段は2階へとつながっていきます(階段は2カ所あり、生活しやすい)。

ダイニングより北側デッキとM2階に浮かぶバスルームを見る。

「ストレイジキューブ」の中

「ストレイジキューブ」の中はこんな感じです。真ん中にらせん階段があり、収納は扉を付けず半透明のカーテンで仕切っています。あちこちに開いた開口から光りが柔らかく入ってきます。

1階リビングフロア。エントランスコーナーからソファコーナーを見る。上にM2階スタディルームが透明な床を通して見えます。スタディルーム上部のトップライトから光りが落ちてきます。
M2階スタディルーム。透明な床を通してエントランスコーナー(床は透明アクリル)が見えます。現在、エントランスコーナーはワンちゃんたちのケイジが置かれていてワンちゃんを見ながら楽しくスタディです。

1階リビングフロア・M2階スタディルーム

「ストレイジキューブ」2階。真ん中のらせん階段、前後ろ2段の本棚上部のトップライトからは柔らかな光が入ります。廻りの壁面は全て部屋の入口や収納の扉です。
M2階タタミルーム。キッチン上部に位置するこの個室は、外部との窓がありません。採光はトップライトからです。タタミ両側の地窓が1階リビングフロアと柔らかくつながり、落ち着いた場所になっています。

「ストレイジキューブ」2階・M2階タタミルーム

生活の収納をあちこちに配置するのではなく、発想の転換で、家の中心を一つの巨大な収納とし、その周りに生活を展開させる。だから、どこにいても手を伸ばせば物入れがある。片づけやすく物が散らからないシンプルな空間は、エンドレスにぐるぐる廻れる空間構成によって、さまざまな生活の変化に対応できる「未完成な強い家」ともなっています。

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平面図

図はクリックで拡大します。

プロフィール

住宅設計のスペシャリストとして活躍、TVや雑誌でも紹介され、受賞歴も多数

古見 演良氏

[経 歴]
1955年 東京生まれ、1979年 東京電機大学建築学科卒業、1984年 千包建築研究所一級建築士事務所開設、2002年 プラステイクに改組、1997年~東海大学講師、1993-96年 東京電機大学講師

[受賞歴]
1998/1999年 東京建築士会「住宅建築賞」最優秀賞受賞/「日本建築学会」作品選奨受賞(F-HOUSE 2)、1999年 東京建築士会「住宅建築賞」連続受賞(F-HOUSE 3)、2001年 和歌山県 未来の木の家「きのくにデザインコンペティション」受賞、2007/2008年 東京建築士会「住宅建築賞」受賞/神奈川建築コンクール受賞/第11回TEPCO快適住宅コンテスト/「日本建築学会」作品選集受賞(トール)

プラステイク一級建築士事務所
協力: (社)東京建築士会

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