- 第 99 回
住宅ローン金利を選ぶために
香取 玲子
昨年は政権交代という大きな時代のうねりがありましたが、景気低迷は依然として続き今だ先行きが読めない状況にあります。住宅業界においても新築住宅の着工は大きく落ち込みました。
ただ、ファミリー形成期にあたる団塊ジュニア世代を中心に住宅取得の意欲には回復の兆が見受けられます。新年から住まいづくりナビセンターへ来館されるお客さまも増えてきました。これを後押ししているのが、税制優遇等の政策とともに住宅ローンの低金利です。
住宅ローン利用者はその金利選択にあたり、一時今後の金利上昇を見込して長期固定金利へ流れていましたが、思いの外金利が上がらない状況の中、また変動金利や短期固定金利選択型に人気が集まっています。固定金利に比べ金利が1%以上も低いとなると毎月の返済額の違いは顕著ですから、やむをえないとも言えます。
たとえば、借入金額2000万円 返済期間35年の住宅ローンの場合で毎月の返済額を比較すると、金利3.0%で76,970円、2.0%では66,252円、1.2%では58,340円とその差額は歴然としています。
しかし、住宅ローンの返済期間は長期にわたりますので、その間金利が上昇して返済額が増えてしまうというリスクがあることは十分に承知しておかなくてはなりません。
とりわけ次のような項目に該当する方が変動金利を選ばれる際は、より慎重になっていただきたいと思います。
- 借入金額が多い
- ⇒元金が多いほど金利が上がった時の影響は大きい
- 返済期間が長い
- ⇒期間が長いほど金利が変動する可能性が高い
- 返済比率(年収に対する年間返済額の割合)が高い
- ⇒金利が上昇するとゆとりのない家計が更にひっ迫してしまう
- 現在の住居費(家賃など)と比べ返済金額が高く支出が大幅にアップする
- ⇒住宅取得したことで今までの生活水準を保てなくなる
- 小学生以下の子供がいる
- ⇒概ね中学生以降10年間の教育費の準備
- 転勤等で単身赴任や賃貸する可能性がある
- ⇒二重生活による家計費増、賃貸収入確保の不安
- 株価や為替といった経済の動きには興味がない
- ⇒借入後もローン内容の見直しを常に意識する必要がある
- 性格的に些細なことも気になって不安を感じてしまう
- ⇒金利動向に一喜一憂することがストレスに
現在のような低金利の時期に固定金利を確保しておくことは、返済計画も立てやすく将来的に安心という大きなメリットがあります。一方リスクがあっても対処できる裏付けがあれば変動金利を利用することも有効な手段といえます。
私がこれまでご相談を受けた中で、短期固定を含めた変動金利を利用されても金利上昇に向けた対応が可能だと考えられた事例をご紹介したいと思います。
- 【ケース1:20代のご夫婦 将来的に子供2人を希望】
- ◎年収:夫(会社員)350万円・妻(公務員)250万円
◎借入金額:3000万円[変動]1.2% ◎期間35年
自己資金が少ないため借入金はやや多いが、共働きで奥さまは出産・育児休暇を取得した後も働く意欲大
毎月の返済金額は家賃とほぼ同額
現在奨学金の返済があるが5年後に完済予定
金利上昇を予測しているので2・3年後に固定金利に変更予定
お子様が誕生するまで家計に余裕がある間に繰上返済をして元金を減らすことが可能
- 【ケース2:30代のご夫婦+子供2人(1歳・4歳)】
- ◎年収:夫(会社員)600万円
◎借入金額:2500万円[短期固定3年]1.8% ◎期間30年
親からの資金援助を含め自己資金が3割
新居は奥さまの実家近くのマンションで先々二世帯住宅建設の可能性もある
子どもの就学後に奥さまはパート勤務予定
余裕資金があるときにこまめに繰上返済に努める
- 【ケース3:40代のご夫婦+子供2人(10歳・12歳)】
- ◎年収:夫(公務員)500万円
◎借入金額:2000万円[固定15年(勤務先共済ローン)]2.5%と[変動]1.2%
◎期間35年を2分の1ずつ
希望金額を借入するためには低金利の長期ローンを組まざるを得ないが、定年退職金により一括繰上返済が見込める
教育資金が最もかかる時期と重なるため家計収支にあまり余裕はないが、学資保険により準備している
住宅ローンを利用する方はそれぞれの条件や考え方が異なりますので、まずは家族のライフプラン表を作り、長期的に家計をシミュレーションすることをお勧めします。検討されているローンの返済をしていくうえで、金利の変動を加味しながら想定される家計収支の厳しい局面に向けてどのように対処することができるのかを考えてみましょう。
そして借入時の金利の低さを重視して上手く利用するのか、それとも金利が高いことは保険と考えて安心を取るのかご自身が納得できる選択をしていただきたいと思います。
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