毎週、様々なテーマでお送りする、
Housing Column。
第 99 回
【色々な色のはなし (9)】


 梅雨明けと同時に東京では連日30度を超える日が続いていますが、仕事帰りにグッと一杯!ビール好きにはたまりませんね。さて、よく見慣れているビール瓶ですがなぜ茶色が多いのでしょう?「美味しそうに見える!」だけではありません。ビールにとって光は大敵!特に紫外線が当たるとビールに含まれているホップの苦味成分が酸化反応を起こして、“日光臭”と呼ばれる独特の臭みがつきビールの風味が落ちてしまうそうです。
 光酸化は日光だけでなく蛍光灯などの光でも起こるので、外からの光をできる限り遮るため遮光性に優れる茶色の瓶が使用されているそうです。
 ビール瓶と同じ効果を発揮しているのがサングラスです。サングラスをかけるのはなぜでしょうか?それは「まぶしい!」からだけではありません。サングラスは白内障の原因の一つである紫外線からの予防に役立っているのです。
 皆さんは「高齢視」という言葉を知っていますか?「高齢視」とは、加齢と共に変化する視機能の低下の総称です。「視力の変化」「老眼」「グレア」「暗順応の低下」「白内障」などがあげられます。今回のコラムは、加齢によって訪れる「白内障」を中心に色の見え方の変化を知ることで、これからの暮らしに役立つヒントをお伝えしたいと思います。

●白内障による色の見え方の変化

 白内障は、水晶体の白濁と黄変による老化現象です。水晶体は元々透明ですが、加齢とともに水晶体のたんぱく質が酸化していき白く濁ってきます。また水晶体は紫外線から目の網膜を痛めないように防いでくれているため、長い年月の間にメラニン色素によって黄変してきます。水晶体がサングラスの役目をしています。そして水晶体が黄変すると可視光線の中の短波長 (青〜紫) の光が吸収され、網膜に届きにくくなることで青系の色の認識が低下してくるそうです。
 これらの現象によって色の見え方にも変化が起こり、判別しにくい色や配色が出てきます。見分けにくい色の組み合わせは家庭内事故にもつながり、美しく感じられない色は在宅時間が長くなる高齢者にとって快適性を損なうばかりか、感情の不安定さをも引き起こしかねないでしょう。
 人は約750万色から1000万色もの色の違いを見分けられると言われています。雪や氷など白い色に囲まれて暮らしているエスキモーは「白」だけでも100色は見分けられるそうです。しかし加齢によって白内障が進んでくると見分けられる色の数は減少し、そのため素材感やモノの形状の違いが分かりにくくなるようです。例えば洗い物をした時、柄物のお皿に汚れが残っていたり、白いお茶碗にご飯粒がこびりついていても気が付かなかったり・・・。物には必ず色があります。隣り合う色の明るさが近いと区別がつかなくなるので、形の小さな物はなおさらです。思い当たることはありませんか?
 
 水晶体が黄変するということは、黄色いフィルターを通して物を見ているとイメージしてください。(白内障の進行度合いや他の要素にもよりますのであくまでもシミュレーションです)

国連の世界保健機関 (WHO) の定義では65歳以上の人のことを高齢者としています

●色の明るさに違いをつける

 「視力の低下」や「老眼」はメガネで補うことができますが、白内障は補えません。白内障に配慮するには、「隣り合う色に明度差 (色の明るさの違い) をつける」ことで物の形を分かりやすくするとよいでしょう。例えば、手すりは身体の安全を守るものですからベージュの壁紙とこげ茶色の手すりにするなど慎重に決めましょう。また床とドアや引き戸が同じ色だと境目が分かりにくく危険です。階段の降り口や段鼻ははっきりと識別できるような配色にしましょう。色は形より早く認識されるので、危険を伴う場所では瞬時に分かる色として赤や黄色など鮮やかな色を使うのもよいでしょう。


●光の明るさを忘れずに

 物を見るには明るさが必要です。高齢者は若年者のおよそ2〜3倍の照度 (光の明るさ) が必要と言われていますが、照度を上げることで「視力の低下」や「暗順応の低下」を補うことができます。だからといってすべての環境を明るくすると眩しさに対応できないという「グレア」に影響を及ぼします。危険から身を守り、情報を正しく早く脳に伝えるために、必要なところに必要な明るさを確保してあげることが大切です。例えば、暗くなりがちな廊下や段差が分かりにくい階段には足元灯をつけるとよいでしょう。
 
 白内障はいきなり起きることではなく、日々の生活の中で少しずつ変化していくことと記憶が補ってくれていることもあり、本人自身もなかなか気付きにくいものです。また同じ物を見ていても人それぞれ見えている色に違いが生じています。これから暮らしていく上で配慮できることは、まずは物を決める際には危険を回避するためにも、物の形が認識できるかどうかを考えることが大切です。その次に、常に身近に置く物でしたらなおさらご自分が元気になったり、心地よいと思える配色であるかどうかで決めるとよいでしょう。
 今はお年寄りと一緒に暮らすことが少なくなっているので、どのように不自由になってくるのかは自分が年を取って初めて分かることになります。加齢による見え方の変化を少しでも事前に知っておくことでこれからの暮らしに役立てて頂ければと思います。

[住まいのナビゲーター 大谷 みどり]
住まいと暮らしのHAPPYジャーナル
夏の暮らしにひと工夫して ラクにエコ&節約 です
8月12日掲載予定
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