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住まいと暮らしの専門用語ナットクコラム

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HOUSING COLUMN
第 125 回

【住まいと街】

-建物を大切にする仕組み-(1)

 持続可能性(サステナビリティ)ということばが当たり前のように聞かれるようになり、住宅の寿命がほかの国と比べて格段に短い日本でもやっと、長期的に使える住宅を建てる人を支援する制度(長期優良住宅認定制度)が始まりました。けれども、建物はそれ自体が丈夫に使いやすく作られているだけで長生きするわけではありません。私たちの住まいは、そのまわりの建物や自然の風景と一体となったまとまり、つまり「」の中にあります。街の環境もまた、建物の価値を決める大きな要因なのです。街をどのようにマネジメントするか、その仕組みは持続可能な社会の重要なポイントです。

 百年を超える建物が数多く残るヨーロッパの都市で、こうした仕組はどのように機能しているのでしょうか。世界に先駆けて街並みの保存を行ってきた国フランスのパリとボルドーの例を紹介します。

パリ市のマスタープラン
パリ市のマスタープラン

 街の環境をマネジメントする基礎になるのは自治体のつくるマスタープラン(都市計画図)です。パリ市のマスタープランは7千の区画が2千分の一の縮尺で描かれ、すべての図面をつなげると13キロを超える長さになります。建ぺい率、建物の高さや道路からの後退距離、保存部分、空地の位置、場所によっては住宅の比率までがきめ細かく指定されています。日本の常識からは大きな束縛に見えるこうした規制が受け入れられているのは、建物は街と一体であり街は公共のものである、公共の利益は個人の自由より優先される、という認識があるからです。自由にものが建てられない一方で、突然近所に大きなマンションが建つ、といったことは起こりません。街の将来の姿を共有するためのルールづくりには、多くの知恵と労力が費やされます。市民との協議会も開かれます。パリ市が行った協議では、市民から出された提案の3割以上が保存にかかわるものでした。保護規定は、古いものを大切にしたいという市民の意見でもあるのです。実際ヨーロッパでは、一般にメンテナンスさえよければ古い建物のほうが値段が高くなります。

保存再生された労働者住宅
保存再生された労働者住宅

 パリ市が現在行っている再開発のひとつに、中心街から程近い、中世から手工業者が住んでいた街区があります。老朽化していた建物を市が買い取り、職人やアーティストの工房、低所得者用賃貸住居、それらに保育園や菜園といった住民へのサービス機能を加えた複合プログラムを整備中です。経済原理にまかせていては零細な職人や低所得者層が中心街から締め出され富裕層だけになる、そうした住人の単一性は都市の持続可能性をおびやかすという考え(パリ市では貧困層が集中したエリアが荒廃し、その再生に非常にお金がかかった経験があります)のもとに、採算の取れない事業を自治体が行っています。長い目でとらえられた街のメンテナンス事業といえます。

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 ボルドー市は80年代から地方都市が共通に抱える中心街の空洞化に悩んできました。日本でも近年シャッター商店街と呼ばれ問題になっています。ボルドーは2005年に世界ではじめて1810ヘクタールもの市街地が世界遺産に指定されました。これも市が長い年月をかけて取り組んできた都市再生の成果のひとつです。ボルドー市はプロジェクトをひとつずつ積み重ねる中で市民の心をつかみ、自分たちの街に対する誇り、すなわち「シビックプライド」を培ってきました。閉ざされていた川沿い一帯を広大な公園として開放し、モダンなトラム(※)が街の各地をつなぐ。街を歩くと、デザインが街づくりの中で効果的に活かされていることが感じられます。こうした活動は、市の建築博物館と協力し市民に公開されるだけでなく、世界に向けて発信されています。

ガロンヌ川沿いの公園
ガロンヌ川沿いの公園
オープンにつくられたトラム路線
オープンにつくられたトラム路線

※【トラム】 路面電車

 市のかかげる再生のテーマは「誰もが住める街」です。荒廃した中心街では、単身者ではなく家族を呼び戻そうと、古い住宅の改修事業が進められています。現代の基準では小さすぎる住宅を隣同士合体したり、風通しや日当たりをよくするために減築する(建物の一部を取り除く)など、古い建物を住み継いでいく様々な方法が試みられています。

 振り返って自分の住む日本の街のことを考えると、いったいどれほどその街の将来の姿が想像できるでしょうか。街のマネジメントは、もっと住民が自然に参加するオープンでわくわくするものにできるはずです。それに関わることは私たち建築家にとってもスリリングに違いなく、そうした機会は日本でもどんどん増えていくでしょう。

◎資料提供「都市再生研究所」

[一級建築士事務所K-keikac 野上 恵子]

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