- 第 7 回 住まいのナビゲーター:松本亜古さん[前編]
「住まいの計画書づくり」の具体例
その1
「住まいの計画書づくり」のプロセスは、お客様の状況や家族構成、課題などによって十人十色。新人ナビゲーターの松本亜古さんが手がけた2つの事例を通して、「住まいの計画書づくり」の実際をご紹介します。
現在の住まいを建て替えて、
父と娘の2世帯住宅に
松本さんが手がけた最初のケースは、以前は家族5人で暮らしていたことのある家を、60代のお父様と20代の娘さんが2人で住むように改築したいというご相談でした。
「長女は他県に嫁いでいて、奥様は他界。現在は独身の次女が結婚しても、そのまま住み続けられるように改築したいというご希望でした。一方で、長女の方にとってもその住まいは実家。帰ってきた時に、彼女にとっても居心地のいい家にしたいというお気持ちも強く、また、いずれご自身が亡くなったとき、自分が住んでいたスペースを切り離して人に貸せるようにしたいなど、子どもを思うお父様の気持ちをどうすれば反映できるかがポイントとなりました」(松本さん)
また、現在お住まいになられているのは、お父様が生まれる前に建てられた家です。ご近所付き合いも密で、地域を愛する気持ちが強いお父様は、家の前の桜並木をみんなが楽しむ邪魔をしたくないからと、「桜の時期が終わった後に着工し、翌年の桜の季節までには工事が完了しているように」と希望したほど。
それだけに、現在の場所を動かないことが第一の条件でしたが、現在の住まいは狭小な土地に建っているうえ、セットバックが必要なため、建て替えるとなると難しい設計になることが予想されました。「どこに頼めばこんな条件で建て替えできるのか知りたい」と娘さんがインターネットを調べたのがきっかけで、父娘で住まいづくりナビセンターに来館されることになったのです。
これまでの住まいの「いいところ」「不満」
の整理が突破口に
さまざまな希望を、狭いスペースという現実に合わせていくためには、「住まいの計画書」に沿って、お2人が考えているこれまでの住まいの「いいところ」と「不満」を言葉にし、生活スタイルとすり合わせながら、新しい住まいに何を引き継ぎ、どこを改善するかを明確にしていく作業が有効だったと、松本さんは振り返ります。
「最初はお父様の意思が一方的に強くなって、娘さんの希望が反映されないのではと心配しましたが、計画書づくりをスタートさせてみると、親子間のコミュニケーションが実に良くとれているお二人だということが判りました。娘さんもご自分の意見をきちんとお父様に伝えられ、お父様もそれを尊重なさるという関係が普段から築かれていたのでしょう」
計画書づくりを通して、お二人が「人の気配は気にならない。むしろ人の気配を感じられるほうがいい」という一致した意見を持っていることが判りました。それをヒントに松本さんは、「2階に共用のリビングと和室を設け、引き戸で仕切ることによって、長女の方も滞在できるフレキシブルなスペースを作る方法もあります」と提案しました。また、計画書づくりを進めるうちに、当初の希望以外にも、「水害に強い家」というテーマが浮かびあがってきたため、浸水した場合の想定水位と、それに対応できる住まいの高さを調べる方法を伝えることもできました。
「住まいのナビゲーターは図面までは描かないので、設計者として歯がゆいところもあります。でも、設計者として関わると、予算や条件が先行して、お客様の気持ちだけを第一優先として考えてばかりはいられません。それがナビゲーターという立場だと、お客様と一緒になって悩み、本当の意味でお客様の側に立ってアドバイスできるのが醍醐味ですね」

- 月1回の定例会には14名のナビゲーターが全員顔を揃え、お客様の状況を報告し合い、課題に対してアイデアを出し合います。さまざまな経験や知識を持つナビゲーターが活発に意見を交わすことで、より的確な解決の糸口が見つかりやすくなります。
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約半年の研修期間を経て、住まいのナビゲーターになった松本さん。「限られた時間の中で、このお客様には何をお伝えする必要があるのか、どう表現すれば理解していただけるかを把握し、相手に合わせて的確に対応する先輩ナビゲーターのナビゲーションに同席して、この仕事の奥深さを実感しました」。
ナビゲーターfile4
松本亜古さん
- プロフィール
- 大学の住居学科を卒業後、設計事務所に勤務、退社後2年の独立準備期間を経て今年の1月に独立。昨年11月から住まいのナビゲーターに。一方、大学で非常勤講師として設計製図を教え、また、地元の「里山を守る会」や、国際交流協会で学生の国際交流の手伝いをするなど、ボランティア活動にも熱心に取り組んでいる。趣味はベランダガーデニング。



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