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Housing Column ハウジングコラム

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第 5 回
シラオラケットカワセミの
  不思議な間借り住まい


●日本とは違う?
  オセアニアの森のカワセミの秘密


 世界で一番美しいといわれる鳥、カワセミ。鮮やかな極彩色と、バランス的にはちょっと大きすぎるしゃくれた嘴がなんとも可愛く、バードウォッチャーに最も人気がある鳥です。狩りの際、狙いを定めると羽を瞬時に折りたたみ、矢のような形になって水中に飛び込み、小魚などを捕らえる見事な技は、あまりにも有名です。日本のカワセミの多くはその名のとおり餌場である川の近くの、土で出来た崖や木に、小さな穴をあけて巣をつくります。ところが、オセアニアに生息するシラオラケットカワセミは森で生活し、子育てのために全く別の動物の家を間借りするのです。

●アリ塚の間借り住まいが
  愛の巣です


 オーストラリアやパプアニューギニアの熱帯のジャングルに生息するシラオラケットカワセミ。恋の季節である雨期が近づくと、尾の長いオスがちょっと小柄なメスに求愛します。そして産卵のための愛の巣作りが始まります。  さて、彼らの愛の巣づくりを探検する前に、このジャングルの様子をちょっとみてみましょう。40メートル近くある大きな木が鬱蒼と生い茂る森の中に、幅50センチほどのこんもりとした石のようなものがいくつも点在しています。その名は『アリ塚』。人間の住まいには大敵である“白アリ”がつくった巣です(日本の白アリとは種類が違います)。これは白アリが数十年、数百年もかけて土と唾液で壁を何重にも築き上げたもので、コンクリートほどではありませんが、石こうぐらい硬くて頑丈な壁式構造住宅です。我々で言えば、地震に強い耐震住宅。たとえ大きな動物がきても簡単には壊せません。なんとシラオラケット夫妻は、このアリ塚の一部を愛の巣にしてしまうのです。
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オスが施工・妻インテリア
・大家は左官屋さん
 巣作りはオスの役目。アリ塚の横に体を小さくしてやっと通れるような、直径5センチほどの穴をあけ、どんどん掘り進みます。この時メスは、近くの枝からアリ塚の前に掘り出された大量の土をボーっと見守るだけ。微動だにしません。さらに食事の時間になると、オスは巣作りの手を休め、餌さがしに。妻の分までとってきて分け与えます。そして再び、家作りは男子一生の仕事とばかりに穴を掘り続けるのです。そう、この時すでにメスは妊娠しているのです。だから夫が頑張るのです。
 丸3日間かけて30センチほど掘り進み、ちょうどアリ塚の真ん中ぐらいに少し広めの産室をつくりあげます。そこで初めて妻が動き出します。ちょっと太めになったメスは入り口を広げつつ中に入り、卵を産む場所を整えるのです。つまり工事はオス、インテリアは妻といった役割分担が出来ているのです。
 そしてついに完成‥、と言いたい所なのですが、アリ塚の壁にはアリの通路が縦横無尽に張り巡らされていますから、当然無理に穴をあけるとボロボロと崩れてきてしまいます。ここで、シラオラケットカワセミは、数日間何もしないで外で待つのです。実は、最後の仕上げに、この住宅の大家さん兼左官屋のプロである働きアリ達が出動! 唾液と土で産室の中の崩れかかりそうな壁を綺麗に塗り固め、たった一日でリフォームしてくれるのです。数日後には壁が乾いて、素敵な愛の巣が完成!
 ここではじめてメスが卵を産みます。シラオラケットカワセミは、この白アリの習性をよく知っていて巣作りをしているのです。
 
●断熱材効果と空気の循環システム完備の場所でヒナ誕生

 この住まいの良さは、耐震設計で、大家さんがリフォームのプロというだけではありません。建物じゅうに張り巡らされた白アリの通路が空気の層をつくり、断熱材的効果を発揮します。寒暖の差が激しい季節であっても巣の中は25度前後の一定の温度で保たれるのです。さらに白アリの通路を通って空気も入れ替わりますから快適そのもの。そこでシラオラケットカワセミは、夫婦が交代で1時間に1回、15分だけ卵を温め、32度前後の室温をつくります。これで卵をずっと抱き続けなくとも孵化させることができるのです。「自然の力を利用する」というこの発想、ぜひ人間の住まいづくりにも生かしたいですね。
 もう、言うことナシの子育て住宅に見えますが、一点だけ困ったことがあります。それは雛がかえった後。その糞で巣の中が汚れ、ハエの幼虫や蛆でいっぱいになること‥。このために、雛鳥は変な病気にかからないよう9日目ぐらいで透明な膜で全身を覆い、体を守ります。そして一月弱でこの膜がとれ、巣立ってゆくのです。動物たちの暮らし方や住まいは、ホントに知恵と工夫がいっぱいですね。
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