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Housing Column ハウジングコラム

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第 6 回
天幕の家
 《はるかなる大草原に溶け込む
モンゴルのゲル》

●高層アパートよりも、ゲルの暮らしの方がイイ?

 モンゴルと聞いてイメージするのは、“モンゴル相撲出身の横綱「朝青龍」”“ジンギス・カン (源義経だという伝説も)”“大草原を走る馬”“遊牧民が多い”“日本人と容姿が似ていて蒙古斑がある”そして“「ゲル」というテント型の住まいで暮らしている”といったところではないでしょうか。
 今回はその、天幕の家「ゲル」を探検。
 さすがに都市部では高層アパートなどに住む人が増えていますが、モンゴルでは今でも国の半数以上の人が「ゲル」で暮らしているといわれています。また都会に出て来た若者の多くが、近代設備の整った住まいを感受しながらも『高層アパートは便利だけど、風通しが悪くて息が詰まる。週末や夏休みに父母の暮らす草原のゲルに帰るのが楽しみなんだ』と言うそうです。都会暮らしでも、心には草原暮らしへの思いを秘めているのです。はたして、そんなゲルの暮らしとはどんなものなのでしょうか?

●建てるのに1時間半。解体は30分

 古来、遊牧を主な生業としてきたモンゴルの人にとって、移動に適し、かつ気候風土に臨機応変に対応できる住まいをつくることはとても重要なことでした。つまり軽くて持ち運びやすくて、しかも寒暑に耐えられる住まい。「ゲル」は見事にそれらをクリアしているのです。早速、建てる行程をみていきましょう。
 まずは選んだ場所に木の床を敷き詰めます。これは持ち運びがしやすいようにパネル状になっていて、全てに番号が振られています。その番号の順に並べていけば、誰もが簡単に床を組み上げられるようになっているのです。次に2本の柱を使って《トーノ》と呼ばれる屋根の中央にくる円形状の天蓋(明かりとり)を支えます。続いて壁の骨組みとなる《ハナ》という柳の木で組まれたものをぐるりと建てまわします。格子状になったこの《ハナ》も、蛇腹式に折りたためて軽くて携帯しやすい優れもの。さらに《ウニ》と呼ばれる棒を《トーノ》の外周にある穴にはめ込み、逆側を《ハナ》に引っ掛けて固定すれば枠組みの完成。これを獣毛のフェルトで覆っていくのです。
 およそ60m²の「ゲル」を建てるのに、4~5人で約1時間半、解体はたった30分!

●家はその土地で採れる材料でつくるのが一番

 単なる昔風のテントじゃないか、などと思ったら大間違い。そこには知恵と工夫がたくさん隠されているのです。まず、ゲルのまわりを覆うフェルトは通気性がよく、かつ断熱効果も抜群。冬ならばこれを幾重にも重ね部屋の暖を逃がさないようにします。つまりフェルトの枚数で家の通気性や断熱性を即座に変えることが出来るのです。また地面から20~30センチは下をあけておき、夏は風通しがいいようにそのままに、寒くなると布や木製のもので閉じるようにして「ゲル」の温度調節をするのです。
 もちろん、材料となる柳・白樺といった骨組み用の木材や、これを縛るラクダの腱・馬の尾、そしてフェルトに至るまでの全てが、土地のものや遊牧民の暮らしの中で手に入るものばかり。だから修復も素早く出来、シックハウスなどの問題も一切ありません。重さにいたっては、骨組みとフェルトだけならたった250キログラムという軽さ!
 家はその土地で採れる材料でつくるのが、最も風土や気候にあう‥。これは、私達の住まい作りにも大切なポイントと言えそうです。

●ワンルームでも大自然に抱かれた壮大なる暮らし

 「ゲル」の間取りの基本はワンルームで、通常一つのゲルに5人~10人(祖父母・息子夫婦や兄弟・孫達)の家族が暮らしています。中央には竈があり、この煙を《トーノ》という天蓋から逃がすのですが、あえて上に蓋をし、肉などをスモークしたり、虫よけにしたりします。この発想は、日本の古民家の囲炉裏にそっくりです。
 ただし燃料は牛糞。これも遊牧の中でとれるもので、あえて床に木材のかわりに牛糞を敷き、発酵するその温かさで“自然式床暖房”にしているゲルもあるとか。
 モンゴルの遊牧民は、子供の頃から家の手伝いをします。外で遊ぶようになったら大切な燃料となる牛糞集めにいき、物心がつく頃には乳搾りや乳製品の作り方、馬の扱い、羊の解体の仕方を覚えます。食料も一切無駄にはしません。毛をとった羊は、内臓まで上手に料理して食べ、骨は適当な大きさに砕いて子供のおもちゃにするとか (ビー玉のように遊ぶ)。そして、季節の移り変わりに従って、荷物をまとめ「ゲル」をたたみ、次なる土地へいって家を再び組み上げる。こうして、子供達は家づくりを含めた「遊牧民としての生きる知恵と工夫」を大自然に包まれながら学んでゆくのだそうです。だからこそ家族や親戚の結束は固く、とても仲がいいのです。
ゲルの構造
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ゲルの内部 (断面図)
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