My Life,My Style
home>Housing Column>住まいと暮らしの雑学探検隊>水の上に住む (1)
  • Navi Menu
  • Housing Column
  • ハウジングコラム
  • 専門用語ナットクコラム
  • 雑学探検隊
  • HAPPYジャーナル
  • 番外編 住まいづくりのプロの視点

Housing Column ハウジングコラム

バックナンバー
第 7 回
水の上に住む
 《アジアの水辺暮らし(1)》


●水の上で暮らす理由はいろいろですが…

 船で一家全員が暮らす、水の上に家を建てて生活する…、特に東南アジアでは、そんな生活をしている人々がたくさんいます。「一家で漁業を営んでいるから」「陸に土地をもてないから」「潮の干満や河川の氾濫があるから」「猛獣や毒虫などの外敵から身を守るため」など理由はいろいろですが、水の上の住まいには様々な知恵と工夫があります。

●中国の家船は開閉ドーム型の屋根つきです

 まずは、アジアの中でも船上生活者が広く分布する中国から探検のスタートです。中国の家船で、最も一般的なものはサンパンと呼ばれる長さ4~5メートルの小さな船です。船底が浅いので、甲板上に小屋を建てて住んでいる人が多いのですが、仕事である漁業を行うために、全てを屋根で覆ってしまうとちょっと不便です。そこで、広東省などで見られる家船には、籐で編んだ開閉式ドーム型の屋根を装備したものが少なくありません。漁をしたり船を操舵したりする時は、周りを見やすいように屋根をあけ、日差しが強い時や夜眠る時は居住スペースを包むように広げる。つまり、天候や時間・作業内容によって、広げたり畳んだり出来るようになっているのです。
 もう少し大型の船になると、居室は甲板上に板や防水布で囲ってつくり、衣服や道具類は船倉の空間を使って上手に収納。使うものだけをその都度取り出し、甲板をある時にはダイニングに、ある時には子供の遊び場に、またある時は漁の網を直す仕事場に変身させます。トイレと炊事場は船尾の水面上に反り返った部分に設け、汚物を海に流せる仕組みにしています。

クリックすると拡大表示されます。
●返還前の香港には水上都市がありました

 返還以前の香港では、このような船が香港島と対岸の島の間に集まり、なんと15万人もの人が水の上で生活していました。学校や床屋の船もあり、香港の家船は、まさに水上都市を形成していたのです。無数に船が浮かび、一見無秩序に見える湾内でしたが、基幹となる航路や枝分かれした水路によって、住家艇(住まいだけの機能で動かない)の集まる水域、漁船や荷役船が集まる水域、一般の船が停泊する水域に区画わけされていました。住家艇の水域は互いの船と船は舫われ、さらに板を隣の船、また次の船へと渡し、陸地まで歩いてもいけるようになっていたそうです。いわば、水上都市のメインストリート。この道を最も利用していたのは子供達です。狭い船室にいるよりも開放的な渡し板の上で、友達と遊ぶほうが楽しく、また危険な自動車もこないし、落っこちても泳げばOK。安心して走り回ることができたのです。私達がこのような水上生活をすることはできないかもしれませんが、「子供たちにとって安心で安全な暮らし」という考え方は、家づくり・街づくりにも大切な要素といえます。

●結婚式も船、生活必需品も船で売りにやってくる

 香港の水上都市には、お座敷列車ならぬ“宴会船”もありました。水上生活者はここで結婚式をあげたり、誕生祝いしたりと、華やかな宴会を行っていたそうです。
 また、燃料・飲料水もそれを売る船が水域を走り回っていました。各家庭では、この水売り船から2日に1度補給。生活必需品も御用聞きが船ですぐそこまで来てくれるという、コンビニよりも便利かもしれない水上デリバリー暮らしが繰り広げられていたのです。
 しかし現在船上生活者は、田舎の沿海や河川にはまだ見られるものの、汚物による海の汚染問題や、政府の「陸上がり政策」にともなって、香港では最盛期の1%前後に激減したといいます。
 陸上生活の方が便利だという事だけでなく、大型船の増加で、彼らの生活の糧である漁業や港湾関係の仕事が、少なくなったというのが一番大きな理由だったそうです。
 ちなみに、生活はしていませんが、大理石張りの床を持ち、夜景が美しい有名な5階建ての船のレストランは、今も健在です。

●まだまだ生きている船上生活

 中国は変わりつつありますが、選挙活動は船で行うパプァニューギニア諸島や、今も水上都市が広がるカンボジアのトレンサップ湖、インドネシアのスマトラ島など船上生活をしている地域はまだまだたくさんあります。
 しかし、船上暮らしだけが“水の上の暮らし”ではありません。海や湖・運河に杭を打って、水の上に家を建てて暮らしている人々も東南アジアにはたくさんいます。
 次回の住まいと暮らしの雑学探検隊はそんな杭上民家(高床式)の水上住宅に住む人々の暮らしと、なんと「家船は日本民家のルーツのひとつ」という大胆な説を探検します!
Copyright (c) Sumanavi Center All Rights Reserved.