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屋根タイムスリップ (4)
第 33 回
住まいのヒミツ
【屋根タイムスリップ (4)】
「今回も古代から連綿と続いてきた屋根のひとつ、『茅葺屋根』の続編。ついに完成させます!
●平葺きの葺き始めが、厚みと勾配を決定!
前回の「軒」に続き、いよいよ茅葺の斜面を葺いていきます。その名も「平葺き (ひらぶき)」。これは軒から上へと葺いていきます。その最初の部分は「隅棟 (すみむね)」と呼ばれていて、屋根の厚みと勾配を決定付けるところ。隅は茅の流れの角度を変化させていくので、最も熟練を要するとか。だから親方が担当することが多いんだそうです。一般に、元茅、裏茅、長茅と呼ばれる3つの層にして葺き重ね、軒先同様に“押さえ竹”で留めます。これを一工程として、順次屋根のてっぺんである棟に向かって一気に葺き上げていくのです。
●茅葺は、ホントに縫い針で縫い付けるのです!
この作業で登場するのが、竹で出来た長さ30~50センチの巨大な「縫い針」。再三登場する「茅を押さえる“押さえ竹”」は、茅をはさんで、垂木かヨコダケにしっかり結び付けられます。そのためには、厚い茅の層を貫いて藁縄を往復させなければなりません。そこで、茅葺用の「縫い針」が活躍するのです。この巨大縫い針は先端にミシン針のような穴があいていて、ここに縄を通し、屋根をつきさすのです。すると、屋根裏でスタンバイしている職人の一人が突き出てきた縫い針から縄をはずし、垂木にしっかりと結びつくように逆サイドへまわしたら、再び縫い針に取り付ける。その合図を受けた外の職人がこれを引っ張り上げて、その縄を押さえ竹の上で結ぶ。これを二重・三重に通すのです。作業する部位によってはこの「縫い針」を使わずに手で縄を握ったまま茅に差し込むことも少なくないとか。だから茅葺職人の指は驚くほど太くなるんだそうです。
●てっぺんは、雨漏りも耐久性もスタイルも気にします
さぁ、ついに屋根のてっぺん「棟」へ。実はこの処理が難しい!
茅を葺きあげてきて、交わる部分をただ重ねても、薄っぺらな棟になってしまいます。しかも、てっぺんだけに『雨水が入りやすい』。当然だけど『風にも強くなければならない』。さらにてっぺんは一番目立つところだから、『カッコ良くなければならない』。これに対し、地域によって様々な手法がとられてきました。
西日本で多いのは、「針目覆い」という方式。これは平葺きが終わってV字形に残った谷の部分に、長茅を棟と平行に屋根面まで積み上げ、次に棟をまたぐように茅をかぶせていきます。さらにその上に『杉皮』を3、4枚重ね、これを竹と縄を使って留めます。ポイントは、杉皮に縄を通した“穴”が空いてしまうので、これに茅束を渡して穴を隠してしまうところ。
関東では、杉皮を竹で編んだすのこで包み込む「竹簀巻き (たけすまき)」が主流でした。すのこを固定した縄の針目の穴は、竹をつぶして平らにしたもので塞ぎます。
●屋根のてっぺんに花が咲いていたら「芝棟」
穴があかないように縄を使わない方法もあります。一つ目は「置き千本」。これは長茅を交互に積み重ねるまでは他の方法同様ですが、最後に木材をX状に組み上げて、その重みで棟の茅を押さえるというもの。簡単ですが、スッキリとして整然たる印象があります。
極めつけは自然の力を利用した「芝棟」という方法。棟の部分に茅を積み上げ、杉皮をかぶせた後に、なんと土を盛り、ここで植物を育ててしまうのです。すると植物の根が自然にからみあい、棟はしっかりと屋根に固定されます。(ユリ、オモト、シダ、ショウブ、イチハツなどの宿根草を用いる)
比較的新しい手法としては、棟の上に小さな屋根を作ってしまう「箱棟」という手法もあります。
これは、平葺きの葺き終わりに木を組んで屋根本体の小屋組みに固定し、この枠を土台にして、処理が簡単な板葺きか瓦葺の小さな屋根を乗せてしまうもの。
もしも地方へ出かけて、茅葺屋根の家を見ることがあったら、ぜひこの棟にご注目。春先に花がさいていたらそれは「芝棟」。屋根の上に季節を感じるのも、茅葺ならではの醍醐味なのです。
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●仕上げはカットです
葺きあがったばかりの屋根は、当然凸凹だらけ。最後に、茅をそろえ剪定する「叩き」と「刈り込み」を行います。「叩き」とは、洗濯板のような凸凹のある木製の板のついた道具「カギ板」やオールのようなカタチをした「たたき板」という道具で、屋根の上の茅を文字通り叩き締めていく作業。これで勾配をそろえ形を整えていくのですが、驚くことに、茅はまるで粘土のように素直にその形になってゆくとか。
最終仕上げは、刈り込み用のハサミで剪定作業。これはもうミリ単位の作業で、わずかな凸凹も見逃さずに茅を詰めていきます。そして、堂々完成! その姿はご存知のとおり、繊細な工芸品のようでもあります。
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