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Housing Column ハウジングコラム

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第 41 回
 住まいのヒミツ
【お庭タイムスリップ (5)】


●音色を楽しむ庭
鳥のさえずり、虫の声、木々の葉音…

 これまで、目で楽しむ、風情を楽しむものとしての日本の庭をご紹介していきましたが、忘れてはならない、日本人ならではの庭の繊細なる楽しみ方があります。それが「庭の音」です。
 様々な和歌にも詠まれているように、日本人は古 (いにしえ) より自然の音を愛しました。自然との調和を大事にする日本庭園でもそれは変わりません。
 秋の気配を庭で鳴きはじめた鈴虫に感じ、冬はすべての音が吸い込まれていくような雪に、静けさと深深とした寒さを感じます。春先になると、元気な小鳥達のさえずりが暖かさを運んできて、庭木の葉が風でふれあう音が、夏の到来を予感させます。そして、庭石にふりそそぐ梅雨の長雨の音。いつしか、蝉の声が聞こえるようになり、どこからかやってきた蛙の歌声に、夏を満喫する…。
 これぞ、庭の音の醍醐味。庭は造形だけでなく、音の風景もあるのです。庭づくりの中で、そんな音をつくりだす工夫もされてきました。

●水音を楽しむ瀧

 平安の頃から流行した、庭に水を引き入れ、瀧をつくる作庭法をご紹介しましたが、中国の民間信仰の思想を取り入れた造形的なことだけではなく、ここには水音を楽しむという演出も含まれています。しかも様々な瀧の形を岩で表現し、その音色も楽しめるようにしているのです。
 例えば、一段で滝壷に落ちるものもあれば、二段、三段になって落ちる瀧もあり、それぞれ風情も音も違います。
 また、地中から湧き出るような緩やかな瀧や、様々な清水が集まり、ひとすじの水となって落ちる瀧、日光の竜頭の瀧のように、分流して落ちる瀧など、日本庭園を注意して眺めてみると、そのカタチは様々。眺めだけでなく、その水音を楽しむ、好きな水音を庭につくる。これも、庭造りの方向性のひとつと言えるかもしれません。また、本物の水を流さない岩だけの「枯れ瀧」を見て、その音を“想像して楽しむ”、これも日本人らしい考え方です。

●鳥獣を近づけないための道具だった鹿威し (ししおどし)

 日本風の庭園で「音がするもの」をイメージすると、すぐ思いつくのが、料亭などの庭で見かける「鹿威し(ししおどし)」ではないでしょうか。ご存知の通り、「鹿威し」は、水の入り口部分だけくり抜いた竹筒に、水を引き入れ、半分以上水が溜まると傾いて水が外へ出るという仕組み。竹筒の中の水が空になって元に戻る際、叩き台の石に当たって快い音が辺りに響き渡るようなっています。
 もともと、「鹿威し」は、農村地帯で田畑を荒らす鹿や猪、鳥を音で追い払う農具の総称で (本来は案山子や鳴子も含まれる)、竹筒の音が心地よいそれは、「僧都/添水 (そうず)」と呼ばれています。これが江戸の頃に庭に取り入れられ、水音を楽しむ事と竹が石を叩く快い音を堪能するというアイテムとして使われ始めたのです。これには、静的な庭に動きを加えるという狙いもあったようです。

●水の音、庭の大地の音を楽しむ
【水琴窟 (すいきんくつ)】の調べ

 江戸も文化文政の頃、ある庭師によって考案されたとされる、音を楽しむ究極の庭園技術があります。それが「水琴窟」です。その起源は明らかではありませんが、江戸から明治にかけて通人の間で流行し、しばし忘れ去られていましたが、昭和になってテレビ番組でとりあげられ、注目を集めた幻の庭音です。これは、前回ご紹介した茶庭の蹲踞手水鉢 (つくばいちょうずばち) の近くの地中に造るもので、蹲踞から流れ出る余った水の一部を小さな穴から地中へ導き、土の中につくられた「窟」の中に落ちる水滴の共鳴音を楽しむというものです。
 その名の通り、水滴の音は「琴」のような音色で、水滴が落ちる音を地中の「窟」の中の壁に反響させ、雅な音を響かせます。

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●【水琴窟】の繊細なる仕組み

 その心地よい音を作り出す構造は、実によく考えられています。
 蹲踞から余った水は、地中にこぼれ落ちますが、水琴窟の地表部分はすり鉢状になっており、一定量の水を集められるように小さな水路や堤が施されています。その中央に水滴を落とす「窟口」があり、ここから直径3センチほどの管を通って少しづつ水滴が落ちるようになっているのです。
 窟の中は、通常深さ30センチぐらいの空洞になっていて、底には数センチの水が溜まっています (泥をいれ、一定量の水深になるようにしている)。実はこの窟の深さや水深によって、音色が変わります。窟が深くて水深が浅いものほど「低音」で長く響き、浅くて水深が深いものほど高音で響きは短くなります。さらに、窟の中を陶器にするか、岩でつくるかによってもその音色は様々。
 また地表の水路を工夫して、水滴を一定の間隔で落とせるようにしたり、連続で落とすようにしたりと、その庭にあった、また好みの音を創り出すための繊細な仕掛けが施されているのです。
 人工的なものとはいえ、自然に溶け込むような水音の調べを庭に創造する…。それは庭が奏でる楽器のような存在といえるかもしれません。お近くで水琴窟のある庭をみつけたら、ぜひ耳を傾けてみてください。そのゆったりとした調べに心奪われ、自分の庭にも創りたい、と思うことでしょう。
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