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住まいと暮らしの雑学探検隊
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大工道具タイムスリップ (1)
第 42 回
住まいのヒミツ
【大工道具タイムスリップ (1)】
今回からは、住まいを作り上げる大切な「大工道具」に注目。大工道具といえばカナヅチ、ノコギリ、カンナなどをイメージしますが、古 (いにしえ) の日本ではどのように使われていたのでしょう。
●世界の大部分は押すノコギリ。日本は引くノコギリ
住まいを建てたら、庭でイスや本棚を自分でつくってみたい、家づくりの一部を堪能したいと思っているお父さんも決して少なくないはず。でも「どうもノコギリをまっすぐ挽くのは苦手だ」なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ちょっとノコギリの刃の形状をよく見てください。今は色々なノコギリがありますが、日本風のノコギリは刃が使う人の方に傾いているものが少なくありません。つまり、押して切るのではなく、引いて切る。引くチカラを上手に使った方がスムーズに切れるのです。ところが、世界の大部分では、古代ローマ以来、ノコギリは押して使うものであったことをご存じでしょうか。日本は、「引いて使うノコギリ」が主流だったのです。
●クサビ (楔) とツチ (槌) で切り出した木材
エジプトや中国では、古代からノコギリ (鋸) が発明され、縦にも横にも木材を挽 (ひ) きました。しかし日本では、古墳時代にノコギリは登場するものの、それは木材を短くするのに横に切るためだけに使い、縦に切る道具ではありませんでした。日本では、縄文時代以来、木材を縦に切るのに、「クサビ (楔)」と「ツチ (槌)」を使い、打ち割っていたのです。
通常は、木を倒して枝を払って横たえ、ツチでクサビを打ち込みます。そこで出来た割れ目の何カ所かにさらにクサビを追加して、それぞれを深く打ち込むことによって割っていたのです。
ノコギリを縦横に使用するようになるには、600年ぐらいの時を待たねばなりません。
●日本風にアレンジされたノコギリ
古墳時代に大陸から入ってきたノコギリは、ギザギザの歯がそれぞれ二等辺三角形で、押す・引くの違いがあまりありませんでした。これが、6世紀になると、前述のように手前に刃の山が傾くようになり、「引いて使うノコギリ」が主流となりました。ノコギリは日本風にアレンジされたのです。
ハッキリした理由は明らかになっていませんが、西欧では木材を高い台の上にのせて切るために立って作業することが多かったのに比べ、日本は地べたに胡座 (あぐら) をかいて作業することが多く、引いた方がチカラを入れやすかったのではないか、と言われています。また“引く”方が、繊細な作業に向いているとも考えられています。
鎌倉時代になると、中国から枠鋸が入ってきます。大きな枠の中心にノコギリがついたもので、2人で使用するノコギリです。一人が押して、それを返すか、2人で押し合って使うものでした。このころからクサビ&ツチではなく、ノコギリで縦に材木を切るようになるのですが、この道具は広まらず、大きな刃に斜めの柄をつけた「前挽き (別名:木挽き)」と呼ばれる引き鋸が登場し、広まります。これは材木を一人で手前に引いて縦挽きするノコギリ。やはりここでも、「引く」ことが日本人にはしっくりきたのです。
●カンナ (鉋) も引く道具に変化 !
大工さんの見事な技といえば、カンナがけ。薄くて透き通るようなカンナ屑 (屑と呼ぶには惜しいほど) が、小気味良い音と共に削り落とされ、木肌がそろい美しくなってゆく様は、さすが職人技と感心するものです。当然、「カンナは引くもの」というのが日本人のイメージですが、実はこれも世界のほとんどは、カンナに柄やグリップがついており、押して削るものでした。日本では、17世紀に大陸から入ってきたこの“カンナ”という道具から柄をとり、引く道具に変化させてしまったのです。
それまでは、先の尖った細長い柄につけたヤリガンナ (槍鉋) で削っていました。左手で刃に近い柄を、右手で柄の根元よりをにぎって引き削っていました。これも押して使うのが大陸風だったのにもかかわらず、日本では引いて使ったと考えられています。
●キリ (錐) も日本風に、素手で使う
木材などに穴をあける「キリ」も日本風に変化しています。通常日本のキリは、開いた両手を柄にあてがい、それを迅速に前後に動かして、柄を回転させて穴をあける道具です。手が次第に下へさがってくると、即刻手を柄の上にもっていき、下へ下へと揉んでゆくもの。
これに対し、世界では、弓錐、舞錐、曲がり柄錐が主流。つまり、ハンドルや弓をつけて道具でキリを回すという方法。発火用の道具として、日本でも小さな弓を使った道具がありましたが、大工道具としては、直接手で揉み押して穴をあけてゆく方法が取り入れられていったのです。
ことほど左様に、日本の大工道具は柄やグリップなどがなく、手の延長線のように扱われるような道具が少なくありません。またチカラの加減がしやすい「引く」にこだわった道具が多いのも特徴です。これは繊細な作業を得意とし、自分の手に伝わる感覚をとても大事にしていたのではないかと考えられています。なんだかとても日本人らしいですよね。
日曜大工に挑戦する時は、そんな古の日本人の心を思い出すと、上手に出来るかもしれませんよ‥。
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