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襖・障子タイムスリップ (3)
第 52 回
住まいのヒミツ
【襖・障子タイムスリップ (3)】
襖・障子タイムスリップの最後は、今では少なくなってしまったと言われる、襖や障子を作った職人=建具・表具・経師職人のルーツに迫ります!
●大工さんと装丁屋さんの共同作業だった
襖や障子を作った職人のルーツを調べてみた結果、冒頭から申し上げるのもなんですが、実は明確なことはわからない、というのが本当の所です。木と紙で出来た障子や襖は、火災や時代を経ることで焼けてしまったり、処分されてしまうことが少なくありません。さらに、近代以前の職人の世界は、口伝。つまり、字を書ける人も少なく、言葉で伝える事がほとんどだったので、明確な資料がないのです。
当時のわずかな資料からの推測になりますが、普及し始めの平安時代には、襖・障子を作る専門家はおらず、骨組みづくりは大工さんがその製作にあたっていたのではないかと考えられています。さらに紙を貼る「張り手」と呼ばれる工人がおり、この人達は経典や書籍の装丁をしたり、仏画の表具をする専門家であったと言われているのです。
●絵巻に描かれた唐紙師
鎌倉時代以降となると、「唐紙大工」と呼ばれる専門職らしき名が貴族の資料に登場します。襖障子などの下地を貼る専門家で、父子で作業をしていたという記録から、既に専門家としての家業となっていたと考えられています。
作業としては、大工が枠をつくり、次に唐紙大工が下地を貼り、これに絵師が絵を描く。最後に、唐紙大工が裏の唐紙や縁取りを貼る、という段取りです。さらに、別の金具専門の工人がいて、引き手の金具をとりつけたという記録もあります。
16世紀の初めに描かれたとされる「七十一番職人歌合」(歌人の肖像画を添えた絵巻和歌集などを模したもので、職人版の絵巻) には、別の襖・障子専門家も登場します。この絵巻物は、『草刈り』『樵 (きこり)』『餅売り』『帯売り』『琵琶法師』『舞人』『鍛冶』『番匠 (大工のこと)』『僧侶』『遊女』『海女』のほか、なんと『博打打ち』まで、当時の職人や風俗を143人も紹介しているもの。
その中に《唐紙師》という姿が描かれているのです。これは紙や絹を装丁する「唐紙大工」ではなく、唐紙を刷る職人のこと。文様のある唐紙に艶を出すために雲母刷り (きららずり=雲母粉を刷り込む作業) を施す専門家です。
●経師屋さんはみな坊主頭?
興味深いのは、「唐紙大工」や「唐紙師」がみな坊主頭であったり、袈裟を着ていること。元々経典などの装丁をしていた僧がルーツなので、その習慣が残っていたのでしょう。時代を経るに従って、経典の装丁の仕事は減り、襖や障子の仕事が増えます。そこで分業化されていた仕事が統一化されたりしながら、経師屋という職人の存在が確立されていったのです。
また、骨組みづくりも、需要の増加に伴って、大工さんの仕事から「指物師 (さしものし)」「建具師 (たてぐし)」といった専門職になっていきます。
●曖昧な、表具屋さんと建具屋さんの仕事の領域
専門化に拍車をかけたのが、太閤検地 (1582年~) 以降の規格化でした。建築物も同様で、一定のサイズが決められ、建具の大きさや長さも統一されていったのです。当然、襖・障子を専門とする建具屋も登場し、店にたくさんの骨組みが並べられたと言われています。
ここで、建具屋・表具屋・経師屋の仕事の境目も曖昧になっていきます。建物が出来上がって内装に入る際、障子や襖の発注を、建具屋にすることも、表具屋や経師屋にすることも、どちらもあったのです。建具の専門店が、骨組みから唐紙を貼るところまで仕上げることもあり、経師屋が発注を受けて、指物師に骨組みを作らせて、紙を貼り込むなど、どちらでも良かった訳です。
その習慣が続いたせいか、町の中では建具屋さんと表具屋さんの仕事の領域は、昭和の時代に入っても曖昧に見えたかもしれません。
●今では少なくなった職人技の襖・障子
今では機械化が進み、建具や表具の専門職人はめっきり少なくなりました。名人と呼ばれる職人の作る襖や障子は、乾湿の激しい日本の気候の中でも、決して歪まず、なめらかに開閉出来て、貼られている唐紙や障子紙の糊が均一で、湿気でたわむこともありませんでした。また下半分の障子がスライドして、ガラス越しに庭の景色を見ることが出来る「雪見障子」は、何の金具も使わずに (金具を使っているものもある。雪見障子は職人によって仕組みは色々) スッと上に止まり、またスッと下ろせる、名指物師ならではの優れもの。適度につけられたスライドの溝のカーブがそれを実現しているのです。もちろん、湿気や乾燥などの歪みを計算して作っているので、季節によって変わることもありません。
現在は空調設備が整い、一定の温度・湿度に保たれているので、あまり必要とされなくなってしまった技術かもしれませんが、環境共生住宅など、自然と調和する住まいが注目される昨今です。古 (いにしえ) の技と素材の特質を深く理解した工夫には学ぶべきことが少なくないかもしれせんね。
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