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第 55 回 住まいのヒミツ 家具タイムスリップ (2)
【箪笥】
引き続き、「家具タイムスリップ」。今回のテーマは、ちょっと前までは日本の収納家具の代表であった「箪笥 (たんす)」にスポットをあてます。 ●箪笥が普及したのは江戸中期 |
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最近では、クローゼットや洋服ダンス、または作りつけの家具にその座を譲りつつありますが、つい十数年前までは、嫁入り道具の定番であり、日本の住まいには欠かせなかった収納家具、箪笥(たんす)。和室にしっくりとなじむデザインで、はるか昔から日本の住宅にあったようなイメージがあります。 ところが、その普及は江戸時代の中期から後期といわれ、実は比較的新しい存在なのです。 なぜ、箪笥の普及は遅かったのでしょうか。 |
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●昔の庶民に箪笥がいらなかったわけ 一つは、箪笥に入れるものの問題。箪笥と言えば、その神髄は「抽斗 (ひきだし)」にあります。ところが、近世までの日本人は、“ひきだし”を必要とするほどのものを持っていませんでした。つまり、庶民は着たきり雀の人がほとんどで、衣服をしまう箪笥はいらなかったわけです。貴族や武士はモノをたくさん持っていましたが、その出し入れをする部下がたくさんいるので、前回ご紹介した「櫃 (ひつ)」で事足りました。いわば箪笥は、「自分で整理分類できる」「出し入れが便利」ということが必要とされてから登場したわけです。 普及が遅かった理由のもう一つは、材料や生産力・流通の問題。“ひきだし”を作るには、【板】が大量に要ります。しかも厚さ・大きさの揃った規格品で、簡単に入手出来て、安価でなければなりません。戦国時代から近世にかけて、日本の各地で富国強兵を目的とした様々な経営改善がなされ、飛躍的に生産力があがります。また楽市・楽座のような制度改革が流通を発展させ、庶民の生活が次第に向上しました。こうして、衣類が増える一方“箪笥”の材料となる板も流通するようになるのです。 そして社会も安定した江戸の中期になって、都市部を中心に「箪笥」がやっと普及したのです。 ●箪笥の種類 箪笥にはたくさんの種類があります。衣装箪笥・帳場箪笥・茶箪笥・刀箪笥・薬箪笥・店箪笥、そのほか、用途に応じて様々な箪笥が作り出されました。材料は、収縮率が少なく湿気がこもりにくく、また軽く柔らかい感触のある「桐」が適していて、その他にも、杉・樅 (もみ)・檜 (ひのき)・欅 (けやき)・栗・桑などが使われました。 カタチは用途によって様々ですが、衣装箪笥で言えば、最初は“ひきだし”が四杯ぐらいあるだけのものでした。大きさは間口三尺 (約90センチ)、高さは四尺 (約120センチ)といったところ。幕末になると、二つ重ねとして、上には両開きの扉をつけ、中には“ひきだし”二杯、下は四~五杯のひきだしという定番が出来上がります。上の扉の中心には定紋を打ち抜いた金具がつけられたり、閂 (かんぬき)がつけられたり。大名用などの高級品では、黒塗りに、紋を蒔絵で描いたものなどもありました。 ●箪笥が嫁入り道具になったのは明治~大正時代 箪笥が本当の意味で、農山村まで含めた全国各地に普及するのは、なんと明治中期以降から、大正時代だったと言われています。江戸時代は、あくまで都市部のみだったのです。 その頃になると、各地の材料や装飾など工夫を凝らした箪笥が登場し、特色あるものが生まれました。つまり、よくいう「箪笥を嫁入り道具に」という風習は、都市部以外では明治以降のことだったのです。 ●洋服箪笥の登場 明治になり、外国人居留地を中心に洋家具である洋服箪笥が登場します。最初は輸入品が主でしたが、そこは新しもの好きの日本人、鎖国によって御法度だった海外文化をスポンジのように吸収し、和洋折衷の洋服箪笥をつくるようになります。 それは従来からあった二つ重ねで、上の観音開きの内部を、ひきだしではなく、盆にかえたもので、洋服をそのカタチのまま入れてしまえば、型くずれしにくい、というものでした。次に洋家具を真似て、吊り式の洋服箪笥がつくられ、扉の表や裏に鏡をあしらった定番が誕生します。 この洋服箪笥が普及するのは、大正時代の末。あの関東大震災がきっかけでした。その復興の際に、最も新しいスタイルの洋服箪笥が注目されるようになったのです。 |
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またまた余談ですが、日本の箪笥を考える際に、重要な事がひとつあります。それは国際語にもなった「着物」という衣服。日本の着物は、収納する際、「たたむ」ことが原則となります。正しく綺麗にたためば、大変薄く、吊してしまうのが基本の洋服にくらべてあまり場所をとりません。そんな着物をもっとも整理しやすい収納家具が、「箪笥」だったわけです。 最近は若い女性を中心に見直されてきた「着物」。箪笥もまた、見直される時がくるかもしれませんね。 |
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