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ホームパーティ今昔物語
第 58 回
【ホームパーティ今昔物語】
春と言えば、入学式や引っ越しなど、「出会い」や様々な人と「縁を深める」ことが多い季節。近年では、お友達や知り合いを自宅に招いて「ホームパーティ」を開くという方も多くなってきました。またホームパーティは「家を建てたら何をしたいか」と考えた時の夢のひとつでもあります。
今回はお客様を迎えたり、ご近所の人たちとコミュニケーションをとったりする、住まいの空間の今昔についてのお話を紹介しましょう。
●ホームパーティの舞台はリビング
『料理をしながら会話も楽しめるアイランド型キッチンに、広いリビング・ダイニング、そして大きなソファ。そこでみんなでワイワイ楽しむ…』これが、今最もポピュラーかつ理想的なホームパーティの空間イメージのようです。住宅建築の様々な技術の向上やライフスタイルの欧米化などにより、現在はリビングを大きくとるようになりました。そしてリビングは家族がくつろぐ場というだけでなく、来客をもてなし、コミュニケーションをとる場ともなったのです。
では、そんなリビングがなかった昔の日本では「ホームパーティ」のようなものは行われなかったのでしょうか?
●冠婚葬祭などの儀式や宴会が催された客間
今は少なくなりましたが、つい数十年前まで、ちょっとした日本家屋には必ずと言っていいほど「客間」を設けていました。別名「奥座敷」。
「奥座敷」が登場するのは、中世以降の武家の住居からです。江戸中期~後期には、年貢の調査に来る武士を迎え入れるために大きな農家にも「奥座敷」が造られるようになり、明治以降は庶民の住居でもみられるようになります。
実は、戦前まではこの「客間」を中心に、結婚式やお葬式など様々な「儀式」や「宴会」が催されたことが多かったのです。通常、他の部屋とは襖や障子で仕切られていますが、大人数の宴会ともなれば、これを開け放ち大広間としました。現代の「ホームパーティ」よりは堅苦しい一面もありましたが、親戚縁者や近隣の方も招かれ、お膳に料理が並び、お酒が入れば歌や踊りが出ることもありました。「客間」は住まいの中の社交場だったのです。
ただしここは、基本的にお客様を迎えるか、家長の居間であり、他の家族は使うことはありませんでした。家長夫妻の寝所を兼ねることもありましたが、床の間や書院造りの装飾が施され、ちょっと厳粛な部屋にみえたものです。
●そもそもは神様の部屋だった客間
ではなぜ「客間」が厳粛なムードなのでしょうか? 江戸時代の農家では武士をもてなす部屋ですから格式のある部屋になったのは当然ですし、戦前までは父親の権威は相当なもので、家長の居間ともなれば家の顔でもあり、それ相応の普請をしていたのです。興味深いのは、「奥座敷」は「神様」の部屋という考え方が、日本人の心にあったからという民俗学的な説です。
庶民の住まいがまだ竪穴式住居が主流の古代、時の権力者が建てた住居は“神のすみか”または“神”と“天皇や権力者”が出会う社 (やしろ) と考えられていた特別な空間でした。その後「権力者=神」となり、寝殿造りなど複雑化する建物の中でその場所は奥に造られるようになります。これを模した公家住居でも「奥の間」で儀式や行事が執り行われ、さらに武家社会になると主人が客を迎える接客儀礼中心の間となったと考えられているのです。つまり「奥座敷=客間」は「カミと出会う場所」がルーツ。だからこそ冠婚葬祭などの儀式が行われ、厳粛なムードを大切にしたのではないかという訳です。
●“縁”がとりもつ、近隣とのコミュニケーション
しかし「客間」はあくまで公のための空間。現代のホームパーティのような気軽に地域の人々と接する役割を担った空間は別にもありました。それが【縁側】です。
「縁側」は、もちろん雨が中に降り込むのをさけるためという機能的な側面もありますが、神のいる建物に入る手前にある、「ソト」と「ウチ」をつなげる空間であったという説があります。神の社だった建物が平安時代に入り寝殿造りとなり、人の住まいへと変化していきましたが、そこには母屋をとりまくように「縁」と思われる造りが設けられています。「縁側」は神と接する前の前室、いわば手続きの場所であり、神と接する前に人と人が出会う場所と考えられたのです。どちらが先かは定かではありませんが、それで縁 (えにし、ゆかり) という意味が、「縁側」にはあると言われているのです。
ご存じの通り、近隣の方とお茶を飲んだり、家族で果物を食べたりするのに、昔は「縁側」が大活躍しました。欧米では、街の中の「広場」を通して地域の集まりやコミュニケーションが発達しましたが、日本では住まいの「縁側」が地域とのコミュニケーションの場、文字通り「縁を深める」場だったのです。ちなみに、欧米には「縁側」のような文化はあまり見られません。
●現代の縁側と客間=ウッドデッキとリビング
「縁側」を設ける家も少なくなり、日本の伝統的なものが少なくなったと嘆く方もいるかとは思いますが、現代の「縁側」とも言うべきウッドデッキの人気や、和のテイストを活かしたリビングなども増えており、「縁」、「おもてなし」を大切にする気持ちは今も変わりありません。お友達を呼んだ際に、温泉宿風に「お品書き」を書いて得意料理を出したり、対面キッチンでお鮨を握ったりというようなホームパーティをしているご家庭もあるようです。いずれ日本風のホームパーティが、世界から憧れられるような日もくるかもしれませんね。
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