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ツバメのおうちの物語
第 71 回
ツバメのおうちの物語
ピチュ、ピチュという可愛い鳴き声と洒落た燕尾服をまとって素早く街中を飛び回る渡り鳥をみかける季節になりました。ご存じ「ツバメ」です。都市化が進み以前より少なくなりましたが、まだまだ地方や郊外では人間の住む家の軒先や玄関、中には室内にさえ巣づくりするツバメもいます。また、その巣に毎年同じツバメの“つがい”がやってくると言われ、私たち日本人にはとても親しみのある野鳥です。今回はそんなツバメの巣作りやあまり知られていない夫婦関係の真実をご紹介しましょう。
●ツバメのくる家は幸せになる!
「ツバメが巣をつくる家は金持ちになる」「ツバメをいじめると罰があたる」など、日本の各地にはツバメを大切にする言い伝えがたくさんあります。なぜなら米作りが主体だった日本では、昆虫を主食として害虫駆除をしてくれるツバメは益鳥だったからです。しかもツバメは基本的に植物を食べません。だからツバメのいる家は豊作となり、「お金持ちになる」「幸せになる」と言われてきたのです。また人間を信頼し、私たちが暮らす家のすぐ目の前で子育てをする姿はとても愛らしく、ツバメは古 (いにしえ) より日本人に親しまれてきたのです。
●人間はガードマン! ツバメの賢いマイホーム選び
そんなツバメの巣作りをみてみましょう。ツバメはまず雄が先に日本に渡ってきて、家探しをはじめます。新築の巣をつくるツバメは、多くの人間が行き交う玄関や軒先、商店の店先などをマイホームとします。最近では自動ドアつきのマンションの玄関ホールの中に巣をつくるツバメもおり、自動ドアのセンサーの前でホバリングして、器用にドアをあけるツバメも目撃されています。なぜそんなところに巣をつくるのでしょう? 実は多くの人間が行き交う場所では、外敵であるヘビやカラスなどから巣や卵を守ることができます。つまり人間をガードマンに見立てて巣をつくるのです。
●巣作りウォッチング
いい場所をみつけた雄ツバメは、パートナーをみつけ、愛し合いながら巣作りを本格化していきます。家造りは夫婦の共同作業。主な材料は「柔らかい泥」と「枯れ草」。ツバメは水たまりや田端で泥をみつけ口に含みます。これを唾 (つば) とまぜて壁の材料にしていくのです。ちなみに、ツバメを古くは「つばくろめ」「つちはみめ」と呼び、これがツバメに転化したと言われています。“め”というのは、群れを作る鳥を意味する古語で、“つばくろ”は黒い翼、“つちはみ”は、巣を作るため土を口に含んで運ぶ姿が、まるで土を食べているように見えたことが「土喰み」の由来なんだそうです。
逆に言えば、都会にも関わらずツバメが巣をつくる家は、まだまだツバメが暮らせる自然が残っているということ。エコな街に住んでいる証といえるかもしれません。
最初はひと粒ずつ壁に泥をつけ、まずは足場づくり。足場が乾くと、そこに爪先を引っかけて壁にへばりつき、羽をいっぱいにひらいて身体を支えながら泥をつけていきます。間に枯れ草を混ぜるのは風通しも良くするため。巣の内側が乾くと内装に移ります。この作業は主に雌が行い、雄は見張り役に徹します。インテリアは女性が選ぶというのは人間に似ている気もしますが、実はこの時、他の雄に妻をとられないように雄は常に周囲に注意を払わなければならないからなんです。
内装は、鳥の羽や枯れ草で柔らかく仕上げ、およそ一週間でマイホームが完成します。
●ホントに毎年同じツバメがやってくるの?
フィリピンや台湾、マレー半島などの東南アジアで越冬し、数千キロの旅をしてくるツバメの旅は過酷なものです。渡りの途中で命を落としてしまうツバメも少なくなく、ツバメの平均寿命は2~3年と言われています。それゆえ、同じツバメではなく他のツバメが中古の巣を使っている例も少なくありません。しかし、追跡調査をした中には10年近く同じ“つがい”が訪れている巣もあり、生命力あふれるツバメのほとんどは、前の年と同じ巣に戻ると考えられています。またそれは、その家の人間を信頼していることでもあるのです。
●ホントに同じ“つがい”? ツバメの夫婦事情
ツバメは群れではなく単独で海を渡ってきます。先にも述べましたが、雄が先にやってきて、雌を待ちます。無事渡ることが出来れば、そのほとんどが、同じ雌を迎えます。つまり同じ夫婦で暮らし始めるのです。オシドリ夫婦の語源となる「オシドリ」が実は浮気者であることは有名ですが、ツバメは本当にオシドリ夫婦なのです。しかし、“渡り”は過酷なもの。時にパートナーを旅でなくしたと思い、他のツバメと再婚するものもいます。ところが、パートナーが遅れていただけで大変なことになる家庭もあります。ちなみに決定権は雌にあるようです。
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