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住まいと暮らしの雑学探検隊

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住まいと暮らしの雑学探検隊 *
HOUSING COLUMN
第 75 回

才色兼備。「木」のおはなし

 やさしく温かな手触り、清々しい香り、丈夫で長持ちな材質。「木」は古代から人々の暮らしを支え、豊かな文化を育んできました。道具や家の材料として世界中で使われてきましたが、ヨーロッパは「石の文化」、日本は「木の文化」と言われるように、とりわけ日本人にとってはなじみの深い自然素材でもあります。
 時代が移り、鉄やコンクリート、プラスチックなど便利な素材が生まれた現代でも、私たちの暮らしから木の温もりがなくなることは決してありません。今回は、そんな木をテーマに、その奥深い魅力や特性をあらためて探ってみたいと思います。

縄文人は「栗の木」好き

 日本人と木の関わりを見てみると、その歴史は縄文時代にまでさかのぼります。縄文時代の生活というと、ちょっと原始的なイメージがありませんか?ところが遺跡の発掘調査が進むにつれ、その暮らしぶりが実はとても豊かなものだったことがわかったのです。
 日本各地の遺跡からは、急須や湯のみ、漆器、革靴、草で編んだポシェット、アクセサリーなど、さまざまな暮らしの道具や装飾品が出土しました。

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 中でもセンセーショナルな発見となったのが青森県三内丸山遺跡。数百人規模の大集落とともに、直径1メートルもの木の柱を組んで建てたと考えられる「掘立柱建物」の跡が発掘されたのです。物見やぐらのようなこの巨大建物は高さが20メートル以上もあったと想像されていて、木材にはすべて「栗の木」が使われていました。
 また、甘くて栄養価も高い栗の実はとても重要なもので、驚くほどの収穫量があったこともわかっています。
 それほど多くの木材や実を、縄文人はどこから集めていたのでしょう?一説では栗の木を栽培していたと考えられていて、この時代にそのような知識や技術があったことは驚くべきことです。縄文人は栗が大好きで、栗の木が暮らしを支える大切な役割を果たしていたのです。でも、これほど栗の木が使われたのは縄文時代だけなのだそうですよ。
 木で建物をつくり、木から採った樹液(漆)で器を補強し、木の実を食べる。縄文時代、日本人はすでに「木」からさまざまな知恵を学び、それを暮らしに生かしていたのですね。

復元された大型掘立柱建物
復元された大型掘立柱建物

自然の芸術「杢(もく)」

 縄文のから暮らしに深く根付いていた木。その実用性の高さはもちろん、時代とともに、人々は木のさまざまな魅力を見出して、豊かな文化を育みました。
 その一つが「杢」と呼ばれる木の模様。杢は木目の中でも特に装飾性が高く美しい模様で、「鳥眼杢」「縮み杢」「縞杢」「牡丹杢」などの名が付けられています。いずれも製材すると稀に現れる、希少価値の高い模様です。
 生長の過程で木の繊維や年輪が創り出す杢は、まさに自然の芸術ともいえるもの。日本人は、この美しい木の芸術を愛し、家具や食器など暮らしのさまざまなシーンに生かしてきたのです。
 床柱など室内を装飾する優美な木「銘木」も、木そのものの姿に自然の美しさを見出したもの。これもまた、木に対する日本人ならではの感性でしょう。

自然の芸術「杢(もく)」
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【素材あれこれ】
-木のはなし-

 ほかにも、色味の異なる木を組み合わせた「寄せ木」や「象嵌」といった細工で木目の美しさを愛でる文化も生まれるなど、木の魅力はさまざまな形で日本の暮らしを彩ってきました。
 やさしい木の風合いは、現代のインテリアにも随所に生かされています。家具には木目模様のはっきりしたカエデやケヤキ、床には木肌の滑らかなヒノキなど、ちょっと意識して木目の魅力をインテリアに生かしてみてはいかがでしょうか。

やさしい木の香りは殺虫成分!?

 森の中に漂う清々しい香り。木にはそれぞれ特有の香りがあり、私たちはこの豊かな自然の香りをさまざまなカタチで暮らしに生かしています。
 木の香りのもとは、木が自分の身を護るために作り出している防虫・殺菌などの成分。最近では「フィトンチッド」という名で知られ、この成分(香り)に気持ちをリラックスさせる効果があることも認められています。
 虫や菌を寄せつけない成分が、人にはやさしい。なんだかちょっと不思議な感じもしますが、このような効果を暮らしに取り入れた知恵があります。それが「アロマセラピー」。ストレスをやわらげる「ローズウッド」、虫除けになる「ヒノキ」、高い抗菌作用を持つ「ティートリー」など、木から抽出したアロマオイルの多種多様な香りが、心と体を癒してくれるのです。この自然療法は世界最古の医療の一つにも数えられていて、古くは古代エジプト人が美容や健康維持のために利用していたというから驚きですね。
 また、日本古来の香り「お香」も「白檀」や「沈香」などの木から生まれるもの。こちらは効果・効能よりも、香りそのものを大切にした文化といえます。平安の貴族が衣服に香をたき込めて楽しんだのをはじめ、江戸時代には「香組(香りの組み合わせ)」の創作や「香道」など、庶民の文化として花開きました。趣きある和の香りは、使いやすくアレンジされたスティックタイプやコーンタイプのお香として現代に楽しまれています。
 住まいの空気を森の香りで彩ってみたり、アロマのお風呂でゆっくり疲れを癒したり。気分や体調、インテリアの雰囲気などに合わせて、上手に木の香りをセレクトできると素敵ですね。

【木の香りいろいろ】

木の「味」は美味しい

 さて、最後に美味しい木のおはなしを。あまりピンとこない方も多いと思いますが、意外にも木はさまざまな美味しさを生み出す立役者でもあるのです。
 身近なところでは、ベーコンやスモークサーモンなどの薫製。この独特のスモーキーな香りは、「スモークウッド」や「スモークチップ」など木によるもの。サクラ、ナラ、オーク、クルミなど、木の種類によってそれぞれが持つ独特の香りを楽しむことができます。家庭で使えるスモークキットも売られているので、自家製のベーコンやスモークチーズなどにも気軽にチャレンジできますよ。
 さて、薫製をつまみに一杯…。そう、「酒」もまた、木が美味みを引き出している味の一つなのです。日本酒の主な香りはご存知の通り米の醗酵によるものですが、その知られざる引き立て役が「スギ樽」の香り。仕込みや貯蔵用の樽から香りが移るもので、江戸時代には香りの良い吉野スギが好んで使われていたそうです。ウイスキーもまた同様。ホワイトオークの樽から木の香りや成分が酒に移ることで、まろやかな味わいを生み出しています。
 芳醇な香りで美味しさを引き立たせる木。日々の暮らしの中で、私たちは何気なく木の香りを味わっているんですね。

 厳しい自然からいかに暮らしを守るかを考えたヨーロッパに対し、豊かな四季に恵まれた日本の原点は、自然を暮らしに取り入れ、自然とともに生きることにありました。これが、石やレンガでしっかり家を囲む「石の文化」、木肌を生かした開放的な家に住まう「木の文化」という基本的な違いを生み出したのでしょう。
 それに、なんといっても日本は国土の約7割を森林が占める森林大国。スギやヒノキなどの良材にも恵まれた、とても贅沢な木の国なのです。
 優れた実用性と美しさを兼ね備えた木は、まさに“才色兼備”な自然素材。古来の叡智を生かし、木の恵みを暮らしの中に楽しんでみてはいかがでしょうか。

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さまざまな木の表情

カスガスギ
カスガスギ
マツ
マツ
ケヤキ
ケヤキ
ニレ
ニレ
寄せ木
寄せ木
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