- 第 78 回
漆の国。うるわしの知恵。
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しっとりとした手触り、深みをたたえた光沢……。古来、その美しさで人々を魅了してきた漆器は、“木の国”日本を代表する工芸品。椀や箸など暮らしの道具としてなじみ深い一方、世界を虜にした和のアートとしても知られています。
今回の雑学探検隊はそんな「漆」がテーマ。美しいばかりでなく、驚くべき実用性を兼ね備えた自然素材の魅力を探ってみたいと思います。
漆の匠。“蜂”が師匠!?
季節は春らんまん。花々が咲き誇り、蜂の飛び交う姿も見られるようになりました。さて歴史をさかのぼると、この蜂こそが“漆づかいの師匠”だったと考えられていることをご存知でしょうか。
木や軒下に下がっている、アシナガバチの巣は、小指ほどの細い付け根で固定されています。巣は徐々に大きくなりますが、それでも重さに耐えることができるのは、漆を使ってしっかりと補強しているから。蜂は漆(樹液)を吸って、それを自分の粘液と混ぜて巣の付け根に注入しているのです。漆は強力な自然の接着剤として、蜂の住まいづくりに役立てられているのですね。
漆は九千年以上もの昔から利用されていたことがわかっていますが、古代の人々は、こうした蜂の巣づくりにヒントを得て暮らしに取り入れたと考えられています。蜂から学んだ知恵というのはちょっと楽しい説ですね。

縄文時代の豊かな漆塗り文化
では、古代、人々は漆をどのように利用していたのでしょうか。
まず石器時代には、矢尻と矢柄を固定する接着剤として使われていたことがわかっています。数千年を経てもなお、固定された矢がそのままの形で残っているのですから、その耐久性はすごいものですね。
縄文時代の遺跡を見てみると、漆塗りの食器をはじめ、朱色の漆で飾った櫛や首飾り、イヤリング、ポシェットなどが全国各地で発見されていて、集落には漆工房まであったそうです。
また、朱色の漆をつくるためには高度な技術が必要で、そのような技術がこの時代に確立されていたことも驚くべきこと。
こうして見てみると、遥か昔から、人々はさまざまな工夫を重ねながら、漆の優れた特性やその美しさを暮らしに活かしていたことが伺えます。 |