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漆は木や金属、布などさまざまな素地に塗ることができますが、日本では木材に塗られるケースがほとんど。木材は、それ自体が数百年という長い寿命を持ちますが、そこに漆を塗ることで、さらに耐久性が増すのです。「木と漆」。この素材の結びつきがあってこそ、漆はその強さをより発揮することができるのですね。
「百年、二百年先まで使えるように」。漆の文化には、昔の人々のそんな想いと知恵が息づいています。
見えないところに漆の力
金閣寺の金箔は漆で貼られている
さて、漆というと漆器を思い浮かべることも多いと思いますが、このような漆の強さは他にもさまざまな用途に活用されてきました。
身近なところでは、住まいもその一つ。柱や床、床の間などを漆で仕上げることで木材を保護しながら、艶やかで深みのある表情に仕上げることができます。今では住まいの趣きに一役買っている漆塗りですが、昔は家を守るために漆を家中ペタペタ塗っていた地域もあるのだそうです。住まいを大切にする暮らしの知恵だったのですね。
ところで、あの「金閣寺」も漆塗りの建築だということをご存知でしたか?一面金箔の姿はあまりにも有名ですが、あの金箔は漆で貼ったもの。つまり、建物全体を漆塗りで仕上げているのです。漆は唯一、紫外線に弱いという弱点を持っているため、「漆を守るために金箔を貼ったのでは」という説もあるそうですよ。
日本で漆の需要がピークを迎えたのは昭和初期。そのころになると、漆の用途は列車や船といった乗り物から、傘、文具、自転車など身近なものまで多岐にわたったそうです。漆は日本の伝統文化であると同時に、見えないところで私たちの暮らしを支えてきたのですね。
世界をも魅了した漆の美
蒔絵のパネルをはめ込んだ格天井和室
越前漆器伝統産業会館(福井県)
優れた耐久性もさることながら、漆の魅力といえば、やはりその美しさではないでしょうか。最後に、漆工芸の美の粋「蒔絵(まきえ)」についてお話ししたいと思います。
豊かな漆文化を築いた日本でも、ひときわ華やかな存在感を放つのが金銀の輝きをまとう「蒔絵」。漆地の上に漆で文様を描き、その上から金や銀の粉を蒔くことで文様を彩ります。奈良時代に生まれたこの技法は、平安時代に大きく開花。お金に糸目をつけないその美しさは平安貴族のステータスシンボルとなり、絢爛豪華な美の世界が創り上げられました。
蒔絵はその時代から建築にも随所に取り入れられ、宇治の平等院や平泉にある中尊寺金色堂の内部は、さながら極楽浄土のように厳かな美しさを放っていたといいます。 |