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住まいと暮らしの雑学探検隊

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HOUSING COLUMN

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第 79 回

漆の国。うるわしの知恵。
[ 後 編 ]

 「漆」の雑学探検。さて後編では、漆器の強さのもう一つの秘密とさまざまな用途、そして、暮らしを美しく彩る「蒔絵」の魅力についてお話ししたいと思います。

漆に隠された、もう一つの強さの秘密

 前編では漆の強い耐久性についてお話ししましたが、漆の強さの秘密は、それを塗る素材にも隠されています。

*

 漆は木や金属、布などさまざまな素地に塗ることができますが、日本では木材に塗られるケースがほとんど。木材は、それ自体が数百年という長い寿命を持ちますが、そこに漆を塗ることで、さらに耐久性が増すのです。「木と漆」。この素材の結びつきがあってこそ、漆はその強さをより発揮することができるのですね。
「百年、二百年先まで使えるように」。漆の文化には、昔の人々のそんな想いと知恵が息づいています。

見えないところに漆の力

金閣寺の金箔は漆で貼られている 金閣寺の金箔は漆で貼られている

 さて、漆というと漆器を思い浮かべることも多いと思いますが、このような漆の強さは他にもさまざまな用途に活用されてきました。
 身近なところでは、住まいもその一つ。柱や床、床の間などを漆で仕上げることで木材を保護しながら、艶やかで深みのある表情に仕上げることができます。今では住まいの趣きに一役買っている漆塗りですが、昔は家を守るために漆を家中ペタペタ塗っていた地域もあるのだそうです。住まいを大切にする暮らしの知恵だったのですね。
 ところで、あの「金閣寺」も漆塗りの建築だということをご存知でしたか?一面金箔の姿はあまりにも有名ですが、あの金箔は漆で貼ったもの。つまり、建物全体を漆塗りで仕上げているのです。漆は唯一、紫外線に弱いという弱点を持っているため、「漆を守るために金箔を貼ったのでは」という説もあるそうですよ。
 日本で漆の需要がピークを迎えたのは昭和初期。そのころになると、漆の用途は列車や船といった乗り物から、傘、文具、自転車など身近なものまで多岐にわたったそうです。漆は日本の伝統文化であると同時に、見えないところで私たちの暮らしを支えてきたのですね。

世界をも魅了した漆の美

蒔絵のパネルをはめ込んだ格天井和室 越前漆器伝統産業会館(福井県) 蒔絵のパネルをはめ込んだ格天井和室
越前漆器伝統産業会館(福井県)

 優れた耐久性もさることながら、漆の魅力といえば、やはりその美しさではないでしょうか。最後に、漆工芸の美の粋「蒔絵(まきえ)」についてお話ししたいと思います。
 豊かな漆文化を築いた日本でも、ひときわ華やかな存在感を放つのが金銀の輝きをまとう「蒔絵」。漆地の上に漆で文様を描き、その上から金や銀の粉を蒔くことで文様を彩ります。奈良時代に生まれたこの技法は、平安時代に大きく開花。お金に糸目をつけないその美しさは平安貴族のステータスシンボルとなり、絢爛豪華な美の世界が創り上げられました。
 蒔絵はその時代から建築にも随所に取り入れられ、宇治の平等院や平泉にある中尊寺金色堂の内部は、さながら極楽浄土のように厳かな美しさを放っていたといいます。

さまざまな漆工芸
漆塗りの雅びな器(越前漆器)
漆塗りの雅びな器
(越前漆器)
細やかな金の装飾を施した小物や手紙を入れる箱(金沢漆器)
細やかな金の装飾を施した
小物や手紙を入れる箱
(金沢漆器)
インテリアに華を添える花器(金沢漆器)
インテリアに華を添える花器
(金沢漆器)
金箔を貼った美しい手鏡や盃など(漆器に金沢箔)
金箔を貼った
美しい手鏡や盃など
(漆器に金沢箔)

 ヨーロッパ諸国でもその美しさは王侯貴族たちを魅了し、フランスの王妃マリー・アントワネットも日本の漆器をコレクションしていたのだとか。ただ、ヨーロッパの人々を最も魅了した要素は、意外なことに金よりも「漆黒」という色だったそうです。その名の通り、漆黒は深みと艶のある漆ならではの黒色で、ヨーロッパでは決してつくることのできない憧れの色だったのだそうです。
 深く艶やかな漆黒。このような色一つをとっても、暮らしを彩る日本の文化がとても豊かなものなのだと改めて気付かされる思いがしますね。

 優れた耐久性と美しさを兼ね備えた漆工芸。この豊かな文化が育まれた背景には、日本人ならではの美意識があります。それは、時の経過とともに愛着を持ち、「繕いの美」を尊ぶ感性。一つのものを大切に引き継いでいくために、かつては割れた陶磁器を漆で継ぐ習慣がありました。漆器もまた、修繕したり塗り直したりすることで、ずっと美しく、大切に使っていけるものです。
 ものを繕いながら大切に使うことを美しいとしたその感性こそが、長い時を経て漆の文化を築き上げたのでしょう。
 今、住まいづくりには“いい家を、長く大切に使う”という考え方が求められています。このような思想は、漆の文化を育んだ、私たち日本人の感性に通じるものなのではないでしょうか。
 “いいものを大切に使う”。住まいづくりでも、日々の暮らしでも、そんな想いを大切にしていけるといいですね。

蒔絵を施す様子
蒔絵を施す様子

◎参考文献:漆百科(丸善)、受け継がれる日本の美 漆の文化(角川選書)、
NHK美の壷 蒔絵(NHK出版)
◎Photo:金沢市、(社)福井県観光連盟、(社)石川県観光連盟

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