- 第 80 回
暮らしを守った季節の知恵
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もうすぐ年の瀬。冬至も過ぎ、一年で一番寒い季節がやってきます。
さて、豊かに四季がめぐる日本では、古来、季節に応じて暮らしを守るさまざまな知恵が育まれました。寒さの厳しい冬の暮らしにも、そんな先人たちの創意工夫があふれています。
食べ物を長く保存し、美味しくいただく。暮らしの空間を快適にする。大切な住まいを守る。厳しい気候と上手に折り合い、自然と共に暮らした人々の知恵と工夫には、思わず感心させられるものがたくさん!
縁側は冬の保存食工場
のんびり日向ぼっこをしたり、ご近所さんとおしゃべりを楽しんだり。縁側と言えばそんなイメージがありますが、一昔前は、冬の暮らしに備える“保存食”づくりの場としても大活躍しました。軒先に吊るした干し柿や大根、なんとなく思い浮かびませんか?
冬の間、まだ新鮮な野菜が手に入りにくかった時代、人々は秋に収穫した野菜をなるべく長く保存して大切に使うさまざまな工夫をしていました。中でもシンプルな方法が「天日干し」。
たっぷり収穫した野菜や果物を、乾きやすいように切ったりワラで吊るしたりと一手間かけて、庭や軒先にずらり。天気のいい日に干すのですが、雨が降れば慌てて取り込んだりと、まるで洗濯物のような光景も見られたそうです。
こうして太陽の恵みをたっぷり受けた食材は、みそ汁や煮物となって冬の食卓に。寒さで冷えた体をポカポカにしてくれる、冬のごちそうだったのでしょうね。
野菜や果物のほか、寒さの厳しい地域では餅や豆腐を干して凍らせることもありました。この「凍み餅(しみもち)」や「凍み豆腐(しみどうふ)」は、自然の力で作った「フリーズドライ食品」。春から夏、農作業に追われる時期の手軽な食事として重宝したそうです。
自然を上手に活かして日干しにしたり、冷たい風にさらしたり……。冬の食を支えた縁側の保存食づくりは、秋に入るとあちこちで見かけられた暮らしの光景です。
一石八鳥!? 囲炉裏は住まいのスーパー設備
さて、冬に備えた野菜や餅を、囲炉裏の鍋でコトコト……。昔ながらの日本の冬というと、そんな懐かしい光景が思い浮かびます。この囲炉裏、昔の住まいには欠かせない設備で、日々の暮らしは囲炉裏を中心に営まれていました。
生活の中心というだけあって、その役割は実に多彩です。まず、炉で炊かれた火は、室内の明かりや寒い冬の暖房に。囲炉裏の上には天井を張らず、家中が暖まるよう工夫をしていました。また、屋根裏で養蚕を行う合掌造りの家では、囲炉裏から上がる熱を蚕の飼育にも役立てていたそうです。
もくもくと上がる煙にも立派な役割があります。古民家などで見かける黒くなった柱や壁は、囲炉裏の煙で煤けたもの。煙には防腐・防虫効果があり、昔の人々は煙で家中をいぶすことで木材や茅を守り、住まいを長持ちさせていたのです。
また、炉の中に残った灰は、洗濯やみがき砂、トチの実のアク抜きなどにも使われました。
もちろん、煮炊きをしたり、食事をしたりと、家族が集まる団らんの場でもあった囲炉裏。火を焚くだけのシンプルな設備は、四季を通じて暮らしを守った、まさに住まいのスーパー設備だったのですね。
次回後編では、自然の力で冬の寒さを防いだ北国の家、風雪から住まいや暮らしを守った伝統の知恵についてご紹介します。 |