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住まいと暮らしの雑学探検隊

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第 81 回

暮らしを守った季節の知恵
[ 後 編 ]

 豊かに四季がめぐる日本では、古来、季節に応じて暮らしを守るさまざまな知恵が育まれました。厳しい冬の暮らしにも、そんな先人たちの創意工夫があふれています。
 さて、「暮らしを守った季節の知恵」後編では、自然の力を上手に活かした北国の家、風雪から暮らしを守った伝統の知恵についてご紹介しましょう。

冷たい雪は断熱材。大地は自然の床暖房

雪の断熱効果と地熱でチセの室内は冬でも暖か
雪の断熱効果と地熱でチセの室内は冬でも暖か

 前回登場した「囲炉裏」は、火の熱で室内を暖める工夫でした。それとは対照的に、今度は冷たい雪を活かして室内を暖めた住まいの知恵をご紹介しましょう。
 アイヌ民族の伝統的な住居「チセ」は、マイナス40℃にもなるという寒さから人々の暮らしを守ったちょっとすごい家。その造りは、屋根や壁を茅や芦、笹などで葺き、床は地面に直接茅やゴザを敷いたものだったそうです。
 この家を寒さから守ったのは、「雪の断熱材」でした。屋根や壁に厚く積もった雪を利用して、室内の熱が逃げないようにしていたのです。雪の中の暖かさ、かまくらに入ったことのある人は想像できるのではないでしょうか?ちなみに雪が溶けないよう、囲炉裏の火は小さめが基本。大きな火では雪が溶けてしまい、かえって冷え込んでしまったそうです。

 自然の暖房設備はもう一つ。チセでは夏の太陽で蓄えた「地面の熱」を利用して、冬の間“床暖房”代わりにしていました。地面に直接茅やゴザを敷いた床は、地熱で暖をとるための工夫だったのです。また、囲炉裏の火は一年中絶やされることがなく、これも蓄えた地熱を冬まで保つための知恵だったそうです。
 こうして、チセの室内は厳しい寒さの中でも心地良い空間が保たれていました。厳冬の雪。夏の太陽。自然の恵みを知り尽くした人々の、住まいづくりの知恵には脱帽です!

住まいと暮らしを守る、雪国のやさしい知恵

長町武家屋敷跡の薦掛け(石川県金沢市)
長町武家屋敷跡の薦掛け(石川県金沢市)

 最後に、冬の風雪から住まいを守る伝統の知恵、折り合いをつけながら暮らす町の工夫についてご紹介しましょう。
 漆喰や珪藻土など、自然素材として最近人気を集めている土壁。断熱や調湿などの優れた機能で知られていますが、一方で外塀などに使う場合は“水に弱い”という弱点も。雨や雪がしみ込んで凍結すると、ひび割れが起きて傷んでしまうのです。
 こうした凍害から土壁や土塀を守ってきたのが、伝統の知恵「菰掛け(こもがけ)」です。菰掛けは、ワラで編んだ菰を土塀にかけていく雪囲いの方法。決して楽な作業ではありませんが、毎冬欠かさず菰を掛けてやることで、百年以上もの間、美しい土塀を残している町並みもあるのです。
 土塀に限らず、風雪から住まいを守る雪囲いは今も欠かせない冬の備え。囲う素材はワラや葦からトタン板などへと変わりましたが、「大切な住まいを守る」というその思いは、今も変わらず息づいているのですね。

*

 また、雪深い地域では、人々が協力し合い、藩政時代から今に残るこみせ(青森県黒石市)藩政時代から今に残るこみせ(青森県黒石市)風雪から地域の暮らしやコミュニケーションを守る工夫もありました。「雁木(がんぎ)」や「こみせ」などと呼ばれる空間で、通りに面した家々が軒を伸ばし、自分の土地を提供し合って屋根のある歩道を設けていたのです。
 今も残るその面影は、ご近所同士の付き合いが暮らしに根付いていたころの、ちょっと心なごむ風景です。

 厳しい気候も味方に変えてしまう知恵、折り合いをつけながら上手に暮らす工夫。日々を大切に営む中で、日本人は豊かな知恵と文化を育みました。
 暮らしに、住まいに、きちんと手間をかけて大事にする。普通のことだけれど、先人たちの残したさまざまな知恵をお手本に、そんな暮らし方ができると素敵ですね。

私有地を提供し合って人々の暮らしを守った雪国特有の通り道(青森県黒石市)
私有地を提供し合って人々の暮らしを守った雪国特有の通り道(青森県黒石市)

◎参考文献:SOLAR CAT 住まいと暮らしを科学する No.37
(財)アイヌ文化振興・研究推進機構(ウェブサイト)、長岡市(ウェブサイト)
◎Photo:金沢市、青森県

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